尹政権1年の外交総括 前政権と真逆の政策推進

韓国の尹錫悦大統領=アメリカ・ワシントン、4月27日(UPI)
韓国の尹錫悦大統領=アメリカ・ワシントン、4月27日(UPI)

保守誌に異色の批判原稿

日韓首脳によるシャトル外交が復活した。3月に尹錫悦韓国大統領が来日し、5月には岸田文雄首相がソウルを訪問した。隔世の感がある。「ノー・ジャパン」「二度と日本に負けない」と対抗心を隠さなかった文在寅政権では考えられなかったことだ。

尹政権となって懸案の「元徴用工」問題で解決策を打ち出し、過去に拘(こだわ)らず未来志向を強調したことで詰まっていた両国関係のふたが開かれた。新型コロナで制限されていた往来も再開され、堰(せき)を切ったように韓国人観光客が日本を訪れている。

しかし韓国内では尹政権の対日外交に対して反対や反発も多い。もともと政権基盤の弱い大統領である。支持率も30%台を抜け出せず、国会では巨大野党に対峙(たいじ)しながら、与党内でもごたごたを抱えている。その中で、経済界の要請、米国の圧力があったとはいえ、対日関係改善に舵(かじ)を切ったのには相当なリスクを伴ったはずだ。

こうした対日関係も含めて尹政権1年の外交を総括する記事が月刊中央(5月号)に掲載された。元国立外交院院長の洪(ホン)鉉翼(イクヒョン)氏による「特別寄稿・尹錫悦政権、外交の方向を変える」だ。

原稿は尹政権の外交を厳しく批判するものとなっている。外交は実益を求め、強大国に利用されることを避け、「秩序主導国の価値追求に参加し、実利追求に集中」すべしと説いている。保守論調の多い同誌にしては異色の原稿と言える。

尹政権は「価値観外交」を進めている。これは「自由、民主主義、資本主義、自由貿易」といった価値を追求し、価値観の一致する国々と手を組むというものだ。「従北親中」「反米離日」を基調としていた文政権とは真逆の方向となる。これに洪氏は不満なのだろう。「秩序主導国」とは中国、「実利」とは対中貿易と読める。

洪鉉翼氏は文政権で外交院院長を務めた。文政権の外交政策に適(かな)う人物ということだ。だから北朝鮮の度重なるミサイル発射に対して「過度に問題視してはならない」などと発言して物議を醸したこともある。「外務次官級に当たる外交院院長の発言としては不適切との見方も出ている」と報じられたが、「文政権を代弁している」と言われた。

洪氏からすれば尹外交は古びた冷戦思考の「対米追従」「対日屈辱」に映っているようだ。米国の対中牽制(けんせい)(高高度防衛ミサイル配備)に使われて中国から報復(限韓令)を受け、いたずらに北朝鮮を軍事的に刺激して(米韓合同軍事演習)、核・ミサイル脅威の軽減にはつながらず、人権、法治を言う割には大法院(最高裁)の決定をなし崩しにし、植民統治時代の人権抑圧(元徴用工、慰安婦)には目をつむる。

日米韓という冷戦的同盟・戦略的協力関係を志向するのがよほど気に入らないらしい。政権が代わったからといって、百八十度外交政策を変えることに洪氏は強く反発しているのだ。

特に対日関係では「いつの間にか甲から乙の立場に逆転した」と述べている。「甲」とは債権者、「乙」は債務者を指す。韓国が“被害者”として日本の責任を追及していたのに、いつの間にか韓国が責められる立場になってしまったというわけだ。

結局、日米韓の連携を強化していけば、相手側の中露朝の結束を促し、韓国はその対決の「前哨兵に転落する危険性が大きい」だけだと警告し、韓国が求めるべきなのは「北の挑発と南侵を阻止し、北核問題を解決して朝鮮半島の平和体制を構築する一方、北の急変事態を収拾し、平和的統一を実現するところにある」と説く。

同時に日米韓協力体制に拘泥せず、中国、ロシアとも「少なくとも敵対関係を持たないよう努力しなければなら」ず、米国の外交政策にも「盲従する必要はない」と強調して、韓国歴代左派政権の“どっちつかず”の曖昧戦略に引き戻そうとするのが洪氏の主張の核心だ。

それにしても、普段、元駐日大使などの論文を載せ、対日関係改善を説いてきた中央日報社が旧政権そのままの論理を載せた意味が分からない。編集部内で尹政権の日米韓協力体制への復帰に危惧を抱く部分があると見ることもできる。

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