
過去の歴史忘れず冷静に
ロシアのウクライナ侵攻から始まった戦争が1年を越えた。世界史的に類例がないほど軍事・安保の地形を変貌させた。新型コロナウイルスによる沈滞局面からちょうど抜け出そうとしていたグローバル経済にも大きな衝撃を与えた。平和を前面に出した交渉論は力を失い、新冷戦によってブロック化現象が目立った。米国をはじめとした自由陣営とロシア側に立った諸国の代理戦の様相が深化したのだ。
韓国政府もロシアを糾弾する国際社会と歩調を合わせて防弾ヘルメットや医療品など軍需品支援に乗り出した。昨年11月には米国への砲弾輸出を議論した事実が米メディアに報道され、ウクライナに間接兵器支援する状況が明らかになった。幸い大きい論議はなかった。
問題は今年に入ってウクライナ政府と北大西洋条約機構(NATO)から兵器支援要請が殺到しているという点だ。米ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は今月2日、「各国が決める主権事項」としながらも、「できる限り最善を尽くして支援してほしい」と述べた。ただ語っただけではない。ある種の圧迫が隠れている。
そのためか韓悳洙(ハンドクス)国務総理(首相)が翌日公開されたCNNとのインタビューで、ウクライナに殺傷兵器を支援するかどうかについて「まだ決定していない。現在はしてない」と多少あいまいに話した。聞きようによっては殺傷兵器支援はしないという既存の政府の立場から一歩後退したように聞こえる。
ウクライナへの直接兵器支援は敏感な問題だ。ロシアの侵攻に憤ることとは別で、韓半島の状況を考慮せざるを得ない。兵器支援に難癖を付けてロシアが北朝鮮との協力を加速化したり、中国を通じた経済的圧迫に出るという可能性を排除し難い。すでにプーチン露大統領はウクライナに兵器を提供すれば「両国関係を崩壊させる」と威嚇している。
政府としては兵器支援の可能性を引き続き明確にしない方法がさまざまな雑音を減らす最善策かもしれない。だが、殺傷兵器支援の可能性を開けておくだけでも韓半島の新冷戦構図を強固にするリスクであることは否認できない。機会を見て韓半島の安定を害する兵器支援はできない(不可)という立場を整理をする必要がある。
すでに韓国は、サプライチェーン(供給網)を統制して同盟諸国が中国の先端技術に必要な原材料を輸出できないように制裁する方式の米中貿易戦争の真っ只中に立っている。ウクライナへの殺傷兵器支援も冷静に落ち着いて考えなければならない。偏りが大きくて直面した過去の歴史を忘れてはいけない。
(パク・ビョンジン論説委員、3月9日付)