
【ソウル上田勇実】北朝鮮により拉致された日本人被害者について昨年世界日報に証言した元北朝鮮工作機関幹部のキム・グクソン氏が15日、再度本紙の取材に応じ、2002年の日朝首脳会談より以前にキム氏自身が被害者の一人、横田めぐみさん=失踪当時(13)=と会食したことがあると明らかにした。会話内容など詳細は不明だが、キム氏はめぐみさんの印象を「素敵で有能な人だった」と述べた。
キム氏によると、めぐみさんとの会食にはキム氏が所属した朝鮮人民軍偵察総局の初代局長や日本人拉致被害者を管理しているとされる朝鮮労働党統一戦線部の部長などを後に歴任した金英哲氏が同席したという。

めぐみさんと会食した理由についてキム氏は「われわれの所(工作機関)で使えるかどうか確認し、選抜するため」とし、「招待所で生活し、党が衣食住の面倒をよく見てあげたこともあり、めぐみさんは素敵で有能な人だったが、全ての拉致被害者がそうだったわけではない」とも述べた。
めぐみさんがキム氏と会食した正確な時期は不明だが、めぐみさんが20代か30代の頃だったとみられる。

北朝鮮はめぐみさんの生死と関連し、1994年に精神疾患が原因で自殺したと説明。その後、夫の金英男氏が保管していたとする遺骨が日本に送られてきたが、DNA鑑定の結果、偽物であることが判明した。
日本人拉致被害者に対する北朝鮮の「死亡」発表についてキム氏は「待遇がいいのに簡単に死ぬはずがない。まして殺(あや)めることは決してあり得ない」と強調した。また日本人拉致被害者に万が一のことがあった場合は「必ず報告を受ける立場にいた」が、少なくとも14年に脱北するまでは「そのような話は一切なかった」という。
一方、日朝交渉の窓口役でもある北朝鮮の宋日昊・朝日国交正常化大使についてキム氏は「本人には権限がないので、日本は多くを期待しては駄目」と指摘。日朝首脳会談当時、国交正常化に向け北朝鮮側は日本に補償金として「60億㌦から70億㌦を要求した」ため、次の交渉では「それ以上になるだろう」と見通した。