民主は“李在明守護”に全力
共に民主党内には特別な反響を残せなかったが、文喜相元国会議長の「狡兎三窟(こうとさんくつ)」発言は新年の政界の話題とするに値する。万一に備えて三つの穴を掘っておくウサギのように危機管理をしなければならないという意味だ。癸卯(みずのとう)年を迎え、兎(うさぎ)の知恵を借りて李在明民主党代表の司法リスクを指した苦言である。
10日検察に出頭した李代表は堂々としていた。「城南FC不法支援金」事件をはじめとして大庄洞開発不正疑惑、弁護士費用代納疑惑事件などで検察庁舎へ出頭しながらも、「野党弾圧」「司法クーデター」物語は強まるだろう。李代表派には元老政治家の発言が“暇人の助言”だとか内部分裂を助長する不純な扇動ぐらいにしか聞こえないだろう。
文喜相氏の狡兎三窟論は民主党だけに当てはまるものではない。国民の力の党大会の過程で最も頻繁に聞こえた言葉が「尹心」だ。尹錫悦大統領の意図がどの候補にあるのかが当落を左右する要因だという話だ。与野党を問わず党代表選では現職大統領の意中が論議の的になったが、今回のように騒がしくて露骨なケースはめったにない。
尹大統領はメディアのインタビューで「ヨイド政治(国政)に私が関わったのは短いのに、“尹核関”(尹氏核心関係者)や“尹心”などというものがあろうか」と語ったが、それを信じる人はない。かえってヨイド政治の経験が少ないから「確実な味方」に対する大統領の願望が際立っている。
大統領周辺では発足2年目の尹錫悦政権が成果を出そうとするなら、龍山(大統領執務室)と波長が合って自己流の政治をしない党代表が出てこなければならないと話している。もちろん目標は来年の総選挙勝利だ。国会の主導権を持たない“半分の政権交代”では成功した政権も、政権再創出(後継政権作り)も難しいということだ。
羅卿援前議員をめぐる昨今の論議には「自己流の政治を優先する人とは一緒に行けない」という龍山の警告が込められている。
李在明守護に全力投入する民主党を見て舌打ちする与党議員らが尹心論議になぜそれほど無関心なのか分からない。尹心に通じた代表候補者らを味方にしても党が龍山と一体のように動くことはできない。国政の動力が弱まらないように民心を管理し、対野党交渉を通じて立法実績を作り出すことが政権与党2年目の代表の役割であるからだ。
国民の心を動転させる高物価、資産市場の低迷といった経済問題を解決できなければ、誰が党代表になろうが来年の総選挙の展望は明るくない。政治的な責任を取らず、梨泰院圧死事件を引きずっていこうとするやり方も同じだ。尹心でなく民心に敏感な与党代表が必要な時だ。
(黄政美編集者、1月11日付)