敗者復活許容し「分裂」終結を
癸卯(みずのとう)年の新年が明けたが、大韓民国の将来に対する期待と憂慮が交差している。大韓民国は全世界が注目するほどの圧縮した経済成長と民主化の成功で賛辞を受けたが、発展国家モデルと権威主義統治による構造的な脆弱(ぜいじゃく)性のため今日の経済と政治は安定しているとは言い難い。
政治の分裂は大韓民国を覆う最も暗い影だ。理念と陣営(党派)の論理に縛られて相手に対する配慮と寛容を少しも許容しない非理性的な集団意識だ。ある者は「分裂共和国」と称するほど深刻な危機状況だ。それでも政界は岩盤支持層だけを見て、自分と少しでも異なる認識を持った国民を包容する考えは全くない。
新年の経済見通しもそれほど明るくない。政府は今年の経済成長見通しを1・6%と予測するほど悲観的だ。低い展望数値がもたらす国民の不安と経済への悪影響を甘受するほど政府は危機意識を持っている。特に不安な国際情勢は高金利・高物価・高為替レート(ウォン安)の「3高」状況と合わさって、国内経済の複合的な危機を招来している。
自国保護主義が幅を利かす“脱グローバル化”の危機の中で米連邦準備制度理事会(FRB)の悲観的な経済警告に備えて国内の庶民と金融脆弱階層を保護する政策手段に全力を集中しなければならない。特に不動産市場と景気の萎縮によって高金利債務の泥沼に陥る若年層と中小企業経営者のための支援が至急だ。
経済はもちろんだが、安保不安もまた深刻な水準だ。バイデン米政権と中国の習近平政権の覇権対立が幅を利かす新冷戦時代に大韓民国の地政学的な立場はより一層狭く、脆弱にならざるを得ない。
最近、北朝鮮無人機の領空侵犯と相次ぐ弾道ミサイル発射は危機的な安保空白の状況を示している。尹錫悦大統領の外交安保政策「大胆な構想」の実効性が低く北朝鮮の核・ミサイル能力高度化の時間稼ぎに使われているのではないか、北朝鮮を対話と交渉の場にどう引き出すかについて、再点検が必要だ。来年の米大統領選挙まで交渉力を引き上げようとする北朝鮮の小細工が韓半島を緊張と不安に追い込まないように政府の危機管理能力が必要だ。
1987年の民主化以後、進歩と保守の政治理念過剰のため、相手陣営の主張に対する無条件の批判と非理性的な拒否によって大韓民国は「分裂共和国」に転落した。国会で多数を占める野党が立法と予算を統制するので、少数政党の新大統領は国政運営で一歩も進むことができない膠着(こうちゃく)状態に陥った。
いまだに大統領選挙の余波が残っていて勝者と敗者は対立している。選挙には負けても国政運営には参加できる権力構造と選挙制度が必要だ。選挙連合と統治連合を通じて敗者復活戦を許容してこそ、悪循環が繰り返されている対立と分裂の政治は終結し得るはずだ。
(尹鍾彬(ユンジョンビン)明知大教授・政治学、1月1日付)