非難でなくビジョン示せ
最近、ネットニュースで最も多く目にするコメントの類型は「~のために」だ。尹錫悦大統領を暗示するハングル文字(キョン=ユンの上下をひっくり返したもの)を使って「キョンのために大変で暮らしていけない」「キョン外交惨事」「キョンのために経済がめちゃくちゃだ」等々の非難が殺到している。
文在寅(ムンジェイン)前大統領も呼び出される。姓はそのままだが、名前が「災殃(ジェアン)」に変わった。「これ皆文災殃(ムンジェアン)のためだ」「400兆注ぎ込んで災殃を作った」という方式だ。
共に民主党の李在明(イジェミョン)代表も免れない。李代表が検察の捜査線上に上がったことについて、ネットでは「李罪名(イジェミョン)」として通っている。
こうした現象にメディアが一役買ったではないかと言うなら責任を逃れる道はないが、ニュース中断時間制でも導入したい心情で、この行き過ぎた「~のせい」世相を診てみる。
市民だけのせいではなく、政治家たちの責任が大きい。与党は「野党のせい」「前政府のせい」、野党は「与党のせい」だと現政権のせいにすることに忙しい。
普通の「~のせい」は状況が良くない時に多く使うが、現在の韓国の経済・社会状況は実際に良くない。昨年末、経済協力開発機構(OECD)は今年の加盟国の経済成長率を3・9%、韓国は3%と展望した。だがグローバルな景気低迷が憂慮される中、最近の数値は加盟国2・8%、韓国2・7%へ下降した。来年の韓国の成長率は1・8%まで下落する見通しだ。さらに、韓国銀行は1・7%、野村證券はマイナス0・7%と展望している。
経済成長は鈍化する一方で、物価上昇率は簡単には下がらないと予想される。OECDは韓国の今年の物価上昇率を5・2%、来年は3・9%と予想。今年よりは低いが、韓銀の物価目標2・0%をはるかに上回る数値だ。
韓国という巨大会社が売り上げ停滞に陥り、職員にはベルトを締めて熱心に働くように督励・圧迫するが、月給は上がらず昼食の値段は上がる難しい状況が来年到来するという話だ。
苦しいので誰かのせいにしたくなる。ネットフリックスのドラマ『地獄が呼んでいる』の過激な暴力勢力「矢じり」のように、強く非難すればするほど人気を得る。人々は討論どころか、口論まで拒否して反対意見は聞こうともしない。昔の銃と刃が支配した世なら、権力者が反対派を粛清して非難世論のもみ消しを図るような雰囲気だが、今はそのような世の中ではない。非難と攻撃では大部分の問題は解決されない。
今の政府と政治家が最優先すべきなのは、より平安な国民の暮らしのための政策作りとそれを実現できる協力政治だ。少なくとも良くはなるという信頼とビジョンを政府と政治家が見せるべきではないか。
来年のネットニュースのコメントはさらに深刻な「~のせい」で埋め尽くされないか、まだ起きてもいないことに、今からいらぬ心配をしている。
(オム・ヒョンジュン・イシュー部長、12月1日付)