【連載】北の核脅威と韓国核武装(下) 日米韓訓練に「親日」批判

尹錫悦大統領(EPA時事)

北朝鮮がミサイル発射を繰り返していた先月下旬、日米韓3カ国は日本海で約5年ぶりとなる対潜水艦作戦の共同訓練を実施した。想定している脅威は北朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)。相手に発射の兆候を探知されにくく、近年、北朝鮮が力を入れてきた兵器だ。

北朝鮮の潜水艦基地として知られる北東部・新浦(咸鏡北道)の建造現場で、20年近く働いたことのあるソウル在住の脱北者、キム・ユニさん(50代女性)は「新浦では2000年ごろから屋根付きドックでSLBMの建造に取り掛かった。金正日総書記(当時)は年に2回必ず視察に来るほど高い関心を寄せていた」と証言した。

昨年初め、金正恩総書記が開発の事実を明らかにした原子力潜水艦についても「完成間近ではないか」と述べた。

年々増す北朝鮮の核脅威に日米韓が連携して対抗することは「選択ではなく必須」(韓国紙・東亜日報社説)だ。それにもかかわらず、韓国の左派陣営は「親日的」だとして尹錫悦政権の安保政策に難癖を付け始めた。

李在明代表(EPA時事)

特に国会で過半数の議席を占める最大野党「共に民主党」の李在明代表は、米韓安保協力に日本が加わったことを問題視して、「親日国防」「日本が究極的に朝鮮半島に介入できる口実を与える」などと発言し、物議を醸している。

同党執行部や所属議員もこれに追随し、急進的親北派として知られる李仁栄・元統一相を委員長とする「平和安保対策委員会」を発足させた。与党に「親日派」のレッテルを貼る政治攻勢をかけ、尹政権に打撃を与えたい考えだ。

与党は李代表の発言に強く反発している。「李代表や民主党は金正恩氏の首席報道官のごとく、正恩氏が言いたいことを代わりに言っている」(金起炫議員)、「自身に対する(起訴・捜査の)司法リスクを覆い隠すため安保や国益まで投げ捨て、自分だけ生き残ろうという売国行為」(張東赫議員)などと批判が続出した。

李氏と民主党は、レーダー照射事件や日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄示唆など、安保分野に「反日」を持ち込んだ文在寅前政権の偏向的理念を継承している。尹政権は支持率低迷に苦しみながらも日米韓連携を進めようとしているが、左派の「親日」攻勢が足枷(あしかせ)になる可能性がある。

戦術核開発に邁進(まいしん)する北朝鮮は、日米韓連携や国際社会の制裁を跳ね返そうと、外交でも一策を講じた。ウクライナに侵攻したロシアを糾弾し、軍撤収を求める国連安保理決議に、ロシアと共に反対票を投じたのだ。

この反対票が異例だったのは、大国が隣国の小国に侵攻してはならないという70年以上続いた北朝鮮の対外政策の根幹を覆し、米国が北朝鮮を攻撃することに同意したのも同然だったため。北朝鮮は「見返りに今後、国連安保理の対北追加制裁には賛成しないという約束をロシアから取り付ける、いわば“保険”に入った」(元韓国政府高官)状態だ。

北朝鮮は核・ミサイル技術を高度化させ、民主主義を踏みにじる中国とロシアのバックアップで独裁体制を維持している。周辺国の脅威は募るばかりだ。今週に入ってからは、韓国側は定例の野外機動訓練を、また北朝鮮側は日本海と黄海のNLL近くで多数の砲撃をそれぞれ行うなど、応酬が続いている。

日本では国会論戦がスタートした。朝鮮半島の危機にどう対処するのか真剣な議論を重ね、安保を強化する政治指導力が求められる。

(ソウル・上田勇実)

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