昨年5月24日、中国の国家文化遺産局のウェブサイトに博物館の改革と発展を促進するための21の指導意見がアップされた。その中の2番目に「教育機能遂行」という項目がある。博物館を通した愛国主義教育をいっそう強調したのだ。
2002年から5年間進められた「東北工程」以後、高句麗遺跡がある吉林省、遼寧省にある博物館では高句麗関連の展示を多く行ってきた。
東北工程の初期には「高句麗は中国史」「高句麗は中国の地方政権」という一節が入ったパネルを掲示して論議になった。韓国学界はもちろん、中国学界の中でも大変な波紋を起こしている誤った内容のパネルをそのまま掲示したためだ。
その後、学術的な議論と関係機関の努力が反映されて、ある程度の内容整備が行われ、最近はこのように露骨なパネルはほとんど消えた。だが、高句麗史を見る韓国と中国の学界の見解差は相変らず非常に大きい状態であり、東北3省地域の博物館には中国史の立場から非常に巧妙な修辞で高句麗の性格を表現したパネルが掲示されており、注意を要する。
ところが最近、全く予想できないところで高句麗史に関連する問題が発生した。中国国家博物館で開催されている「中韓日古代青銅器展」に韓国の国立中央博物館から送った韓国史年表から高句麗と渤海を抜いて編集した年表が掲示されたのだ。
同博物館の常設展示館には韓国史関連の内容は多くない。高句麗、渤海関連の内容はほとんどない。ところが今回、古代青銅器展が行われることによって高句麗と渤海に対する同博物館の考えが露呈したのだ。
韓国国立中央博物館の強い抗議で比較的短い期間で問題となった年表が撤去されはしたが、相手の博物館が提供した資料を無断で編集することによって、韓国の歴史の系統を混乱させたという事実は消えない。
しかも、他の内容でなく韓中の間で最も尖鋭(せんえい)な歴史の懸案として今も爆発性を持っている高句麗史と渤海史を韓国史から抜く形で年表を恣意(しい)的に編集したことは非常に衝撃的なことである。
中国の博物館は幼い時から愛国主義教育を受けてきた生徒・学生たちが必ず参観する場所だ。中国国家博物館の特別展の年表に現れた高句麗史と渤海史の認識が地方博物館に一種の指導意見のように伝えられることはないのか、心配となる。
高句麗史と渤海史は韓中両国学界の意見の相違が相変らず大きい分野だ。恣意性が強い一部学説により展示内容を構成すれば、深刻な誤りを犯す。今回の事件を単純なハプニングとして軽く受け流すことはできない理由がここにある。
(金賢淑(キムヒョンスク)東北アジア歴史財団首席研究委員、9月20日付)