台湾有事に神経尖らす韓国 米介入なら「同盟の役割」

中国には「海峡の平和」促す 北は在韓米軍を注視

ソウルの在韓台北代表部が入るビルの前で、韓台国交正常化を求める集会を開いた保守系市民団体=2019年8月23日(韓国メディアウォッチ提供)

ペロシ米下院議長の台湾訪問に反発した中国が台湾周辺海域で軍事演習を実施し、白書に「武力使用を放棄しない」と明記するなど、改めて台湾有事に関心が集まる中、韓国も有事への備えに神経を尖(とが)らせている。台湾に近い尖閣諸島の領有を脅かされている日本と異なり、韓国に安全保障への直接的影響を懸念するムードはあまりないが、台湾有事に連動した北朝鮮の動向には無関心でいられないようだ。(ソウル・上田勇実)

2019年8月、ソウル市内で保守系市民団体が韓国と台湾の国交正常化を求める集会を開いた。ある参加者は演説で「台湾は小さな国でありながら最近、中国共産党に勇敢に立ち向かっている。韓国も日本、台湾、香港、インドなどにつながる民主主義の最前線の砦となるべきだ」と述べた。

また別の参加者は「台湾は6・25(朝鮮戦争)時に資金や食糧を援助してくれた」にもかかわらず、韓国は1992年8月に中国と国交を樹立して台湾と断交した際、「新たに中国大使館として使うことを理由に当時の在ソウル台湾大使館の明け渡しをわずか72時間前に一方的に通報した」ことに言及し、過去の非礼を詫(わ)びた。

集会当時、韓国は中国に低姿勢だった文在寅政権。集会は韓国政府が台湾の安保戦略上の重要性を顧みないことへの抗議の意味もあった。だが、「中国を刺激したくない韓国大手メディア」(団体関係者)の編集方針で、それが大きく報道されることはなく、韓台国交正常化を支持する声も広がらなかった。国民にとって何より経済的つながりが深い中国の存在感が高まり、逆に台湾への関心は薄れる一方だったのだろう。

それから3年が経過、韓国は中国への低姿勢を見直し、米国や日本との関係強化に意欲的な尹錫悦政権に交代した。韓国は今回のペロシ議長の訪台を契機に、台湾有事を想定した対台湾政策の点検・見直しを図る可能性がありそうだ。

現時点で中国の台湾侵攻に対する韓国政府の対応は「保安上非公開で、表立って議論の的にもなっていない」(元韓国政府関係者)が、専門家はいくつかの提言を行っている。中韓関係に詳しい韓国政府系シンクタンク国家安保戦略研究院の朴炳光・国際協力センター長はこう述べる。

「中国が両岸関係の特殊性(中台分断の維持)を内政問題と見なしていることを認める一方、台湾海峡の平和と安定維持を支持し、中台いずれか一方のみを支持することは避けるのが望ましいが、万一、台湾問題で軍事衝突が起きた場合、軍事的関わりを最小限にとどめ、選択の余地がない場合は米韓同盟の役割拡大を受け入れる必要がある」

「同盟の役割拡大」でまず挙げられるのは台湾支援に動いた米軍への「物資の供給」(元韓国外務省幹部)だ。在韓米軍が朝鮮半島以外の地域での紛争に投入される、いわゆる「在韓米軍の戦略的柔軟性」についても言及が相次いでいる。「韓国軍当局は在韓米軍のF16戦闘機などが投入される可能性はあるとみている」(韓国紙朝鮮日報)という。ただ、実際には「北朝鮮の脅威に備える必要性や在韓米軍の編成の制約上、可能性は低い」(申●(「王」の右に「玉」)秀・元駐日韓国大使)との見方もある。

一方、韓国は中国に対し「海峡の平和」を求めている。先週、韓国の朴振外相は中国の王毅外相との会談で「台湾海峡の平和と安定の維持が朝鮮半島の平和と安定に極めて重要」と伝えたという。台湾侵攻で在韓米軍が投入される事態となれば、韓国の対北抑止力に空白が生じかねず、北朝鮮が再び朝鮮半島の武力統一という無謀な野心を抱きかねない。

北朝鮮は昨年、朴明浩・外務次官が談話で「在韓米軍が中国圧迫に利用され、台湾周辺に集結している米国とその追従勢力がいつでもわれわれに対する軍事作戦に投入され得るというのは周知の事実」と述べた。在韓米軍への警戒を装い、内部的には米軍による韓国防衛力が手薄になる可能性をめぐりシミュレーションがなされているかもしれない。

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