
現状打破の中で原則重視を
国際情勢が揺れ動いている。欧州でのロシアのウクライナ侵攻で始まったロシアと北大西洋条約機構(NATO)間の対決構図は東アジアで台湾をめぐる米国と中国の衝突につながった。新しい冷戦秩序の下の強大国間覇権戦争の幕が上がったようだ。
ロシアと中国が“現状打破勢力”としての言動を強め、西欧強大国もこの状況を機会と捉えて新しい国際秩序のための現状打破の意図を示している。
この30年間、脱冷戦世界化の時代に国際社会は米国のリーダーシップの下で民主主義と市場経済という価値を志向して協力と対立を続けてきた。「国際規範」に裏付けられない「力」の外交は影響力を発揮しにくかった。
だが、最近の国際政治状況は現状打破を追求する雰囲気が感知される。ロシアと中国がウクライナと台湾海峡で見せている軍事行動はこれを代弁している。これにドイツの再武装構想と日本の軍事力増強努力が正当性を増しつつある。
現状打破の雰囲気が支配する世界で主要強大国はおのおのの道を歩むことになる。米国は中国とロシアを独裁国家と蔑視し、自由陣営と区分して外交的孤立に追い込もうとしている。各国は軍事費支出を増やしている。新型コロナウイルス感染症の経済的困難にもかかわらず、世界の軍事費支出は2021年に初めて2兆㌦を超過した。
強大国は各種の地域経済・安保ブロックによって離合集散し、時代的課題の不均衡発展、気候変化、パンデミック問題解決などから遠ざかっている。主要強大国の指導者らは国際問題を世界的マインドで解決しようという努力が足りないのだ。
米外交専門紙「フォーリンアフェアーズ」は「どの国家も現世界秩序を願わない」という最新記事で米国を含むすべての強大国が現状打破勢力になったと言及した。
ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問は、米国が新冷戦の泥沼へ中国を引き込むために、既存の「一つの中国」の立場を揺るがす、覇権維持のためのもう一つの現状打破戦略を駆使したのではないかと考えられる。中国の台湾海峡での軍事演習は米国を中心に韓国、台湾、日本と続く東アジア自由陣営の安保同盟結束をもたらすという面から、得よりは失が多い示威行動にすぎない。
朴振外交長官(外相)は東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会議で、台湾海峡と東アジア海域での航行の自由を脅かす中国の一方的な行為に対して、国際規範に基づいた問題解決を強調した。これは新政府の「原則ある」外交を見せたものだ。
現状打破の流れの中で、韓国の国益を守ろうとするなら、強大国に振り回される外交や国内政治的な大衆迎合外交ではなく“原則ある”外交だけが要求される。これが新政府が以前の政府とは違って外交的に成功を収めることができる道だ。
(李相桓(イサンファン)韓国外大教授、8月8日付)