【ポイント解説】「鯨の争いでエビの背が裂ける」
大国同士の争いに巻き込まれて、小国がとばっちりを受けることを「鯨の争いでエビの背が裂ける」と韓国では言う。
韓国はまた米中の狭間で選択を迫られている。中国包囲網の一環でバイデン米政権は半導体同盟を形成しようとしている。メンバーは日米台韓だ。お互いを補完し合う体制で4国でがっちりスクラムを組んで中国の「半導体崛起」に対抗しようというものだ。
だが誘われた韓国には苦い経験があって、すぐに飛びつけない。2017年10月、米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)配備を受け入れたことで中国から厳しい報復を受けた。「限韓令」が敷かれ、中国に進出していたデパートもKPOPも締め出され、ソウル繁華街を埋めていた中国人観光客が消えた。今回も同じような反応が出るのではないかと恐れているのだ。
しかし、冷静に国益を考えれば、韓国が日米を蹴って中国側につくということは考えられない。「安保は米国、経済は中国」と都合のいいことを言っていた時とは状況が全く違うのだ。覇権争いをしている双方にいい顔ができるとすれば、相当な世渡り上手だが、現実は両強大国がそんな輩を許すはずがない。そのことは韓国も十分分かっているはずだ。
今は韓国が旗幟(きし)鮮明にする時だ。環境は整いつつある。インド太平洋経済枠組みといい、今回のチップ4といい、中国に対抗する“仲間”が形成されつつある。保守政権の誕生で、日米韓3角同盟を基軸に、韓国の立つ位置を明確にできる。そして中国からの“報復”が予想されるのなら、先の体験を生かして備えるべきだと論説も説く。
エビが騒動に巻き込まれないようにする知恵をそろそろ身に付けなければならない。
(岩崎 哲)