【ポイント解説】自由陣営に軸足を置いた韓国
学者の論文らしく分かりにくいが、要するに尹錫悦政権はNATO首脳会議への出席によって、韓国が民主主義、自由主義経済陣営に軸足を置いていることを明白にした。
だが、それは同時に「陣営化」が進んだ今、政治と経済を分けて考えてきたこれまでとは違い、中国との関係が悪化するリスクを負うことになる、ということだ。
韓国は対中貿易が日米を超える物量になり、中国依存の度合いが高い。だがそれは、中国政府が一声「限韓令」を発すれば、ソウルの繁華街から中国人観光客が消え、中国に進出した韓国系デパートが閉鎖に追い込まれるという政治と経済が直結する不安定な関係でもあった。
ミサイル配備ひとつでこれだったから、“韓国大統領として初めて”のNATO首脳会議出席という“外交成果”を手にするにはそれなりの覚悟がいっただろう。尹政権は中国の反応を注視していたはずだ。
中国外交部報道官が同じく会議に出席した日本に対しては「軍国主義の侵略の歴史を真摯(しんし)に反省すべき」と厳しく批判したのに対して、韓国には「中国と韓国は共にアジアの重要な国家」として、「アジアの平和と安定、発展のために共に努力しなければならない」と批判を控えた。
韓国は胸を撫でおろしているが、これが韓国を陣営から引き剥がそうとする策略であることは明白だ。これまでも日米韓の“同盟関係”にくさびを打ち込むのに、輪の最も弱い部分である韓国が狙われたことは度々あった。韓国がどこまで踏ん張れるかだ。
「相手陣営の利益共有国家」とは中国のことで、そことの関係をどう確立するかが新政府の課題だと指摘する。韓国は今後、中国偏重の是正を真剣に考えていなかければならない。それは一人韓国のみならず、日本も米国も抱える課題ではあるが。
(岩崎 哲)