【ポイント解説】「科挙」式の教育では通用しない
産業のコメと言われる半導体。韓国がその製造で世界をリードしている。だが、再び“半導体競争”が始まって、いざ戦闘モードになろうとしたら、韓国は思っていたほどアドバンテージを得ていなかったことに気付いて慌てている、という格好だ。
中国は「中国製造2025」で「半導体自給率を2025年までに70%に引き上げる」目標を掲げている。これに対して米バイデン政権は半導体サプライチェーン再構築のため「半導体同盟(Chip4)」の結成を目指す。
韓国訪問で真っ先に向かったのがサムスン電子であったことがそれを強く印象付けた。「価値を共有する」国々、すなわち日米韓台で中国に頼らない供給網を構築していこうということなのだ。
その世界的要請に韓国は応える体制ができているのか。振り返ってみたら、人材供給が間に合っていないことに愕然(がくぜん)とした、というのだが、果たしてそうだろうか。
韓国人にしてみれば、サムスンやSKハイニックスは韓国の誇りである。サムスンの人材登用は日本の企業よりはるかにダイナミックで、「人柄」よりも能力、スキルを徹底追及するという。韓国の理系大卒はこぞってサムスンを目指す。優秀な人材が来ないはずがない。ところが、金教授はそれでも教育費が足りないと言う。国策として人材育成し企業にテコ入れせよと“総動員体制”の勢いだ。
金教授がそう思う根拠は何か。世界水準の学校があまりにも少ないことだ。韓国人は「世界10位圏内の経済大国」などと、何かとランキングを気にする。韓国の大学の世界的評価は確かに芳しくない。ランキングをする物差しが欧米中心になっているからだ。
「科挙」の伝統を色濃く残す韓国の高等教育は思考力よりも暗記や知識偏重で、それが世界人材の輩出を妨げている、と思われている。
官吏登用に古典や詩作能力を問うた科挙式から、独創性、創造力を伸ばす教育体制に変えていなかければ、世界で通用する人材を育成できない。だから資金投入だけでは解決しないのだ。同じことは、ほぼ日本にも当てはまるのだが。
(岩崎 哲)