トップ国際朝鮮半島南北再び対決モード 米との同盟強化へ―尹次期政権

南北再び対決モード 米との同盟強化へ―尹次期政権

核先制使用を示唆―金正恩氏 非核化遠のく恐れも

記者会見する韓国の尹錫悦次期大統領(AFP時事)

北朝鮮は先日の「朝鮮人民革命軍」創立90周年の行事で、金正恩総書記が核の先制使用を示唆するなど強硬姿勢を鮮明にした。一方、韓国は来週発足する保守系の尹錫悦次期政権が米国との同盟強化を打ち出し、今月下旬にはバイデン米大統領との首脳会談に臨む。南北は再び対決モードに入っている。(ソウル・上田勇実)

正恩氏は軍創立記念行事で演説し、「核武力を最大速度で強化、発展させるための措置」に取り組むとした上で、新たな核ドクトリンに言及した。

それは「われわれが望まない状況になった場合、核が戦争防止という一つの使命だけに束縛されない」で、「わが国の根本利益を侵奪するなら、核武力の第二の使命を敢行せざるを得ない」というものだ。

正恩氏自身は明言していないが、「根本利益」は金正恩独裁体制の維持、そして「第二の使命」は文脈から核の先制使用を意味するとみられている。これまで「自衛のための核」を核開発の口実にしてきた北朝鮮が「先制攻撃のための核」に踏み込んだものとの見方が広がっている。

ただ、先制使用は「尹氏が大統領当選前から北朝鮮に対する先制攻撃を強調してきたことへの対抗措置」(大手シンクタンク関係者)という側面が強そうだ。先月5日には正恩氏の妹、与正氏も核使用について談話で言及しているが、これも数日前に韓国の徐旭国防相が「先制攻撃」に言及したことを受け、「軍事対決を選ぶなら核武力の任務を遂行せざるを得ない」と反応したものだった。

つまり北朝鮮の核をめぐる一連の発言は、対北強硬路線に舵(かじ)を切ることが予想される尹次期政権に対し断固たる姿勢を鮮明にさせたものと言え、次期政権発足直前にその出鼻をくじく狙いもあったとみられる。

尹次期政権への移行を準備する韓国の政権引継ぎ委員会は、正恩氏の発言や行事に合わせて行われた軍事パレードに反発している。

同委は「北朝鮮の核・ミサイル脅威はわれわれに厳重で現実的な脅威となったため、これを抑止できる能力を備えることが何より至急な課題」とした上で、「尹次期政権は韓米同盟を強化し、核・ミサイル脅威に対応する『韓国型3軸体系』を早期に完成させる」と述べた。

3軸体系とは、北朝鮮によるミサイル発射の兆候が確認された場合、発射基地などを先制攻撃する「キル・チェーン」、高高度ミサイル防衛(THAAD)をはじめ落下してくる北朝鮮ミサイルを高度別に迎撃する防衛システム、攻撃を受けた後の報復措置として地上発射型や特殊部隊潜入などで相手を膺懲(征伐して懲らしめるの意)する3段階を指す。

尹次期政権が今、最も警戒するのは「5月以降、7回目の核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の追加発射に踏み切るとみられる」(李相旻・韓国国防研究院北朝鮮軍事研究室長)こと。5月は10日に尹新大統領の就任式、22日には米韓首脳会談が予定されており、これらを牽制するため実施する可能性は十分ある。

南北が再び対決局面に入った中、尹次期政権にとって決して疎かにできない課題は北朝鮮の非核化だ。しかし、今後、北朝鮮が制裁緩和を引き出すために非核化交渉に応じる可能性は低いとの見方もある。

今回の軍創立記念行事で正恩氏が核保有の理由として米国による敵対視政策に対する自衛権を挙げず、一般論としての情勢不安を挙げたのは「核開発を米朝交渉と分離するための試みか、非核化を前提にした交渉の遮断とみることができる」(洪●(「王」の右に「民」)・韓国統一研究院北朝鮮研究室長)という。

 北朝鮮非核化がさらに遠のく恐れが出ている。

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