【韓国紙】外貨準備より重要な“通貨同盟”

IMF (International Monetary Fund) Fall Meetings=2021年8月11日(UPI)

米日との復旧を急げ

2015年4月、ロシアの外貨準備高が歴代最低水準(3560億㌦)へ下落した。14年クリミア半島侵攻後、西側制裁のためだ。外貨準備高が戦時には軍資金だということを悟ったロシアは、あたふたとウクライナ侵攻直前に歴代最高値(6300億㌦)まで増やした。それなりに国際社会の制裁に備えたのだ。

ところがプーチンは読みを誤った。莫大(ばくだい)な外貨準備高は安全弁でなく、逆に“急所”だった。ウクライナ侵攻に対抗した西側の反撃武器がロシア外貨準備高の凍結だった。海外投資の有価証券3113億㌦、海外預託1520億㌦、金1323億㌦、国際通貨基金(IMF)特別引き出し権(SDR)240億㌦のうち、ロシアが手にした金額は120億㌦(外貨準備高の2%)程度というのが市場の予測だ。同国金融資産の統制権は西側が握っているのだ。

ロシアが何もできずに大変な目に遭っているのを中国も見守っている。世界最大の外貨保有国(3兆4000億㌦)だと威張っているとひどい目に遭う。1933年4月、米国が金本位制度を破棄するとすぐに金と銀の交換比率が1対17から1対132に急騰した。当時の蒋介石政権は9カ月前に銀本位制への復帰を宣言していたので、外貨保有高の80%以上を失った。

外貨準備高の弱点を埋める代案が中央銀行間の通貨スワップだ。08年末の金融危機当時、韓国の通貨当局は2000億㌦保有していても、これが防衛線だとして一銭も使わず戦々恐々としていた。状況を鎮静化させたのは韓米通貨スワップ(300億㌦)。2000億㌦の外貨より300億㌦の“マイナス通帳”(韓米通貨スワップ)が市場により大きい信頼を与えたのだ。

だが、すべてのスワップが同じではない。万一、韓国・ロシア通貨スワップ契約が締結中だったら、どんなことが起こっただろうか。ウクライナ戦費として毎日200億㌦(25兆ウォン)を使うロシアの中央銀行は韓銀に通貨スワップを要求できるのだ。確保した韓国ウォンでドルを買うためだ。国際社会が黙って見ているわけがない。3月7日、韓国政府はロシア中銀との取り引きを中断した。これは韓露通貨スワップ契約の無効化という初めての事態になっていただろう。

最近、米国は対中国金融制裁の強度をますます高めている。米中関係の暗雲がさらに濃くなる傾向だ。4000億人民元(590億㌦規模、70兆ウォン)の韓中通貨スワップの得失をきめ細かく再評価する時だ。

新政府は米日との外交安保同盟関係の収拾を強調する。劣らず急を要するのは米日との“通貨同盟”の復旧だ。中国とは通貨スワップをしながら、米国(安保同盟国)、日本(安保協力国)とは終了状態だ。核心軸が崩れている。通貨スワップは急な時、軍資金を互いに貸す約束だ。だから通貨同盟だ。

(姜太秀(カンテス)前韓国銀行副総裁総補、3月28日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

【ポイント解説】国益から見た通貨スワップ

ウクライナ事態が世界観を大きく変えている。円滑な国際取引に欠かせない外貨準備高も、外に預けてあるものを凍結されては絵に描いた餅で腹は満たせない。ロシアがその報いを受けている。このリスクを埋めるのが通貨スワップだ。各国の中央銀行がお互いに通貨を融通し合う。信頼関係がないと成り立たない。

保守系の新政権発足を契機に、韓国は安全保障を経済・金融の側面からも見直している。特に対日関係では2015年以来、終了している通貨スワップの必要性を指摘する声が大きくなっている。左派政権では言い出せなかったもので、対日関係改善のシグナルの一つと受け取ってもいいだろう。

日韓通貨スワップが満期終了したのは、お互いに「延長」を言い出さなかったからだ。16年には再締結の協議をすることで合意したが、その後、釜山領事館前に少女像が設置されたり、文政権によって慰安婦合意が反故にされるなどして、交渉は打ち切られた。

以後、韓国側では時折「必要だ」「必要ない」の発言が出てきてはいるが、本気度がどれほどのものか、日本政府も測りかねて、事実上放置していた。その間、韓国は中国、豪州、インドネシアなどとスワップ協定を結んでいるが、中国とのスワップは人民元。決済に必要なドルが調達できる体制ではない。そして米国、日本とは今もない。

記事ではロシアと結んでいたら大変なことになったかもしれないとしているが、ウクライナ事態だけでなく、新型コロナでも世界経済は不安定で、通貨危機がいつ襲ってくるか分からない。この状況で韓国としても“安全弁”しかも“筋のいい”協定を結んでおきたいところ。日米との協定が喉(のど)から手が出るほど欲しいのが実情なのだ。

日本は日韓懸案のボールは韓国側にあり、返球を待っているとの立場だが、尹錫悦次期政権の通貨当局から正式に協議再開の申し入れがあれば、これはこれとして応じるべきだろう。そろそろ止まった歯車を動かす切っ掛けも必要だ。

(岩崎 哲)