【韓国紙】ウクライナ事態と自国優先主義 韓国外交も重要な時期

韓国紙セゲイルボ

ウクライナ南東部マリウポリで、損壊した病院から救出される人々(警察当局の映像より)=9日(AFP時事)

ロシアのウクライナ侵攻が1カ月近く続いているが、事態が解決される妙案がない。米国を含む西側諸国が侵攻にまともに対応できていないという批判を避けることはできない。

 ロシアが大量破壊兵器(WMD)を使い、戦術核弾頭の搭載が可能な極超音速ミサイルを実戦で使っているという速報が続く中で、米国が北大西洋条約機構(NATO)を通じて武器を支援するという発表は呑気(のんき)に聞こえる。

 米メディアはバイデン大統領がロシアの侵攻を防ぐことができなかったのを一次的な失敗だと指摘し、経済制裁もやはり効果が現れるのを待つにはウクライナの状況が深刻だと批判している。大統領が早くにウクライナに米軍を派遣しないと一線を引いたことが事態をさらに悪化させたという批判も出ている。

 国家安全保障会議(NSC)の欧州担当だったビンドマン陸軍中佐はツイッターで、「バイデンは災難を招き、プーチンを大胆にさせた」と指摘した。昨年のアフガニスタンからの米軍撤退の余波と国内の経済状況などから、ウクライナ事態に中途半端に対処したという指摘だ。

 西側諸国も同じだ。ロシアからのエネルギー輸入の割合が高いドイツなどの国は国際社会のロシア制裁方針に煮え切らない対応をした。ポーランドはウクライナにソ連製ミグ29戦闘機を支援し、代わりに米国からF-16戦闘機を支援してもらう方策を進めたが、これはポーランドがソ連製旧型戦闘機を新型F-16に換えるのが目的だとの分析が出てきた。自国の利害関係が最も重要に作動した事例だ。

 ウクライナのゼレンスキー大統領もやはり責任を免れない。事態の初期、「コメディアン出身大統領」だと注目され、外交経験不足などの批判を受けた同大統領だったが、ロシアに対抗して決死抗戦の立場を守って国家的な英雄になった。しかし、決死抗戦の被害はそっくり罪のない国民に回った。

 ウクライナ事情をよく知るワシントンの外交消息筋は、「ウクライナ事態でゼレンスキーを英雄視する状況には同意できない」とし、「もともとNATO加入など不可能なのが明らかな状況で自身の立場を固守し、結果的に国民だけが被害を受けている」と言った。

 バイデン大統領の国政演説に招かれたマルカロバ駐米ウクライナ大使はスタンディングオベーションを受けながら、ぎこちなく笑って拳を握ってみせたが、演説中ずっと沈痛な表情だった。強大国の張り合いで砲火に包まれた自国の境遇に思いが行ったのではないかと察する。

 北朝鮮を背負って、米・中・日・露4強の尖鋭な対立の中に置かれた韓国外交が重要な時期にあるという事実を、ウクライナを通じて改めて噛(か)みしめてみる。

(パク・ヨンジュン・ワシントン特派員、3月21日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

ポイント解説

ウクライナと朝鮮半島情勢

 ウクライナ事態を見ながら、朝鮮半島に状況がよく似ているとの思いを禁じ得ない。突飛な見方かもしれないが、韓国はウクライナと同じ状態に置かれる可能性があった。

 ウクライナ東部にはロシア人が多く、ロシア政府にシンパシー、否、忠誠心を持つ自治政府があり、ロシアは彼らがキエフ政府から“弾圧”され“虐殺”されており、彼らの救援のためといって軍を入れた。ドンバス地方やクリミアはロシアを引き入れるために埋伏されていた発火装置だったわけだ。

 韓国では「従北」と言われた文在寅政権そのものが発火装置じみた存在だったと見るのは極端だろうか。ロシアはウクライナのNATO加盟を恐れたが、中国は北朝鮮が韓国主導で統一され、鴨緑江で西側と対峙(たいじ)することを嫌って、緩衝地帯としての北朝鮮を抱えている。その北朝鮮に韓国が包摂されて、東西陣営の境界線を玄界灘まで引き下げかねなかったのが文政権だった。

 保守政権の誕生で、当面の危機は遠ざけることができそうだが、拮抗する左右両陣営の勢力はそのままで、それはつまり、危機は依然内包されたままということだ。

 こんな話を韓国の知人にしてみたが、「小説だ」と一笑に付された。韓国はそれほど軟(やわ)ではないと。2018年に文大統領は北朝鮮を訪問し、金正恩総書記の韓国訪問の約束を取り付けてきた。もし、金正恩氏がソウルの大通りをパレードし光化門で大集会を行ったら、韓国の雰囲気は一変しただろう。朝鮮半島に平和が実現することは大歓迎だが、幾つもの未解決課題に土をかぶせて、美酒に酔っているうちに、北の工作が進行しかねない。これも「小説」のうちだ。続編として「台湾」も書けるが。

 ウクライナを通じ韓国の現状を「噛みしめてみる」としただけで記事は結ばれているが、今回のワシントンの態度、ウクライナ政府首脳の能力・対応、それらの見え方はソウルからのものとは違う。特派員氏はすこし遠慮し過ぎたようだ。

(岩崎 哲)