【韓国誌】「米国も中国も」が答えなのか?

新冷戦でジレンマの韓国外交、「自強」を通じ「共存」模索へ

韓国の大統領選で保守野党「国民の力」の尹(ユン)錫悦(ソンニョル)候補が当選し、5年ぶりに政権交代が実現した。これまでの文(ムン)在寅(ジェイン)左派政権によりズタズタにされた日韓関係、米韓関係が“正常軌道”に戻っていくかに注目と期待が集まっている。

東亜日報社が出す総合月刊誌新東亜(3月号)で、経済社会研究院外交安保センター長の申(シン)範澈(ボムチョル)氏が「『米国か中国か』でなく『米と中』が答え」を書いている。韓国の置かれた地政学的位置と、現下の国際情勢から導き出される答えが「米も中も」なのだという結論だ。

冷戦構造の中で韓国は共産勢力(中朝)と直接対峙(たいじ)する自由世界の最前線だった。「日本・米国・韓国」と「中国・ロシア・北朝鮮」の対立構造の中で一定の役割を果たしてきた。だが、冷戦が終わり、中国が経済的に浮上してくると、韓国の対中依存度が増し、「安保は米国、経済は中国」という交差した対外関係を余儀なくされてきた。

申センター長は現状を、「中国が第2の経済大国に浮上し、安保の側面でも米国に挑戦する状況で、過去の対応方式がもはや有効でなくなった」と分析する。しかし、これは韓国がより困難な状況に置かれることを意味していた。米中対立の中で、しばしば「韓国はどちらに付くのか」と米国から迫られ、米のミサイル配備を受け入れれば、中国から報復される、ということを繰り返し、二者択一を常に突き付けられるようになったのだ。

その状況で文左派政権は「従北親中」「反日離米」政策を取り、米国の“信頼”を失っていくようになり、対日関係も悪化の一途をたどった。

今回、韓国に保守政権が復活したからといって、単純に冷戦構造に戻ればいいという話ではない。中国は韓国にとってのみならず、日米にとっても大きな貿易相手国であり、今や中国なしでは世界経済は回っていかない。その中で、否応(いやおう)なしに米中の覇権争いに巻き込まれていき、答えを出さなければならないのは韓国も日本も同じである。

しかし、北朝鮮を挟んで陸続きの韓国の置かれた立場はより複雑だ。申氏は、「米中戦略戦争は韓国の安保利益、経済利益、価値に対する挑戦、世界秩序に対する寄与など、多様な次元で韓国に悩みをもたらす」と述べる。そして、「多様な代案を絶えず比較して選択する過程を繰り返すことになるだろう」とし、「国益の実現」「対立より共存」を模索しなければならないと強調する。

この指摘は重要である。原稿は大統領選以前のもので、政権交代を見込んだものではないものの、この分析はいずれの場合にも当てはまるものだろう。ウクライナ危機で見せた米国の態度を見る韓国は、「安保は米国」という一択に固執することをやめるかもしれない。「片方に便乗する選択のジレンマに陥ってはならないということだ」とし、「自強(自ら強くする努力)を通じて『米国と共に、中国と共に』の構図をつくり出すことだ」と申氏は言っているのだ。

だが、残念なことにこれまで韓国はこれに成功したことがない。保守論客である申氏ではあるが、言っていることは文左派政権の姿勢とそう変わりはない。

最も重要なことは、米国がアジア太平洋での役割を同盟国に分担させ、それに伴い、日本の役割も拡大していく中で、韓国が中国に対して毅然(きぜん)とした態度を取るためには、日米との連携を深め、その中で「自強」を図っていくしかないことだ。

「価値に対する挑戦」を自覚するなら、自由、人権、資本主義経済という共通する価値にこそ軸足を置くべきであり、自由、人権を脇に置いて対北朝鮮融和策を取り続けて失敗した文政権の轍(てつ)を踏んではならない。「米中戦略戦争の波高を勝ち抜く国家競争力と力量を育て」ようとするなら、日米との関係強化、信頼構築が最優先されるべきである。

申氏も、「米韓同盟基盤に韓中関係発展を追求」とはしているが、その基盤から日本を抜いては成り立たないという現実から目を背けてはならない。
編集委員 岩崎 哲