審判された文政権の失政

韓国大統領選で保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦氏が、与党「共に民主党」の李在明氏との稀にみる大接戦を制した最大要因は、政権交代を望む世論が過半数に達していたことにある。

韓国大統領選で勝利した尹錫悦前検事総長=10日、ソウル(EPA時事)
韓国大統領選で勝利した尹錫悦前検事総長=10日、ソウル(EPA時事)

有権者は、権力型不正疑惑や不動産価格の暴騰、成果のなかった対北朝鮮融和路線など国政運営の舵取りや国内・対外政策で醜態、失敗が目立った文在寅政権に不満を抱いていた。尹氏は選挙期間中、一貫して政権交代の必要性を訴えた。

選挙戦終盤には、同じく政権交代を訴えた中道系野党の安哲秀候補との一本化を劇的に実現させた。政権交代を切望する、より幅広い層の受け皿を作ったことも勝因の一つだろう。

尹氏は検事時代、国政介入事件で保守系の朴槿恵前大統領に対する捜査を指揮し、その結果、朴氏は弾劾・罷免された。その後、文政権下で検事総長に抜擢されたが、今度は文政権周辺の不正に捜査のメスを入れたことが原因で、辞任に追い込まれた。捜査対象の政治的立場を問わず、法に基づき不正を正そうとした姿勢が「公正なイメージ」につながって国民に評価され、文政権に対抗する保守系大統領候補として一気に浮上した。

文政権では、1980年代の左翼学生運動出身者が青瓦台の秘書官や閣僚、与党幹部として中心的役割を担った。その結果、過度な反日を国内政治に利用することに執着し、見境のない北朝鮮擁護がかえってさらなる核・ミサイル開発を許し、米国の不信を買うなど、安全保障の基盤が大きく揺らいだ。尹氏は日米との関係修復に意欲を示しただけに、北東アジアにくすぶる安保不安の改善に取り組むことが期待される。

ただ、政権発足後の国政運営が順調に滑り出すかは予断を許さない。国会では圧倒的多数の議席を有する野党が立ちはだかり、各種法案の可決が阻止される可能性がある。政治家としての経験がない尹氏に自らの政治勢力がないのも不安材料だ。尹氏は「国民こそ私の強力な政治的支持勢力」(8日遊説)と強調するが、存分にリーダーシップを発揮できるかは不透明だ。
(ソウル・上田勇実)