【韓国紙】尹候補夫妻がはまる易術・巫俗の世界 大統領選で大きな論議に

韓国紙セゲイルボを読む
1月26日、ソウルで韓国大統領選の公約説明会に臨む野党「国民の力」候補の尹錫悦氏(時事)

東西古今を問わず、易術や占星術に親しむ権力者は少なくなかったが、韓国にはとりわけ易術・巫俗(シャーマニズム)に依存する政治家が多い。占い師、巫俗人(シャーマンのこと、男性をパクス、女性をムーダンと呼ぶ)の噂なく行われた大統領選挙があったのかと思うほどだ。

2007年の第17代大統領選挙の時、米紙ニューヨーク・タイムズが「韓国でシャーマニズムが復活している」と報道したのはそれだけの理由があるわけだ。

今回の大統領選挙でも野党「国民の力」の尹錫悦(ユンソンニョル)候補夫妻をめぐる巫俗疑惑が絶えることがない。大統領選挙のたびに巫俗人関連の噂が出回ったが、これほど大きな論議となったことはかつてなかった。

「7時間通話」録音ファイルで尹候補の夫人、金建希(キムゴンヒ)氏は尹候補が「霊的に影響されやすい」と言って、巫俗人の助言に従って大統領府の迎賓館を移転すると言った。金氏はさらに、「洪準杓(ホンジュンピョ)、劉承★(ユスンミン)もクッ(巫俗人が祭祀(さいし)を捧(ささ)げる儀式)をした」と根拠のない主張を展開して、当事者たちの反発を買った。

さらに、「コンジン法師」という巫俗人が選挙対策委員会のネットワーク本部で活動し、尹候補の日程を牛耳っているという疑惑が浮上した。「国民の力」大統領候補を選ぶ予備選挙のテレビ討論で、尹候補は左手の手の平に「王」の字を書いて出てきて論議になり、「天空師匠」という人間が尹候補の“助言者”だという主張も出てきた。

ソ・デウォンという有名な巫俗人によれば、尹候補は検察総長(検事総長)時代、夫人を通じて「曺国(チョグク)が大統領になるのか」と尋ねたりもした。ここまでくると、尹候補夫妻の意識と生活に巫俗が深々と根付いていると見なければならない。

21世紀の先端科学の時代に起こるこの奇異な現象をどのように説明しなければならないだろうか。巫俗人の選挙・国政介入は文明時代にはあり得ないことだ。「崔順実(チェスンシル)国政壟断(ろうだん)」事件は選挙を通さない権力が国政に介入した状況が露呈して、大統領弾劾につながった。

尹候補は周辺の巫俗人たちを全て整理するなど、納得できる措置を示さなければならない。そうでなくても醜聞や家族リスクなどで李在明(イジェミョン)、尹錫悦両候補に対する非好感度がとりわけ高い大統領選挙だ。国民の“不快指数”を高める巫俗の話はもうやめにしなければならない。(パク・チャンオク論説委員、1月27日付)

★=日へんに文

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

ポイント解説

ムーダンが動かす大統領選

ムーダン(巫堂=巫女)が舞を踊りながらある種の入神状態となって託宣を伝える儀式を「クッ」という。土俗信仰で、今では形式だけを残した儀式、あるいは芸能化してはいるが、実際に家族や先祖のことを占うことも多く、韓国では霊媒師が職業として社会に根付いている。

日本で言えば、恐山のイタコ、沖縄のユタなどが近いだろうが、彼女らが決まった霊場で儀式や降霊を行うのとは違い、韓国のムーダンはどこでも憑依できるから万能だ。
もともと易占術は中国の古典「四書五経」の一つ「易経」を教本にした占い術で、占星術や四柱推命など一定程度の統計的根拠を持つが、ムーダンの儀式は巫女の霊的能力に頼るから、ほぼ「迷信」の域を出ない。

ところが、一国の指導者になろうという人物が、ムーダンに振り回されたり、占い師や易占家の言葉を妄信するとなると、話は別だ。重要な政策や外交方針を占いで決められてはたまらないからである。

政権交代を望む国民の声を一身に背負う野党の尹錫悦候補が、夫婦そろって易占に嵌(はま)っているというから驚きである。検事総長といえば、法律の条文に則(のっと)って厳正に法を執行していく存在のはずだ。そこに降霊や憑依、お告げが入る余地はない。

確かにトップに立つ者は孤独に物事を判断し決断していかねばならないから、そこで、理論理屈を超えたものに頼ることもあるのは、古今東西あったことだ。韓国では歴代大統領は何らかの形で占い師の力を頼っていた。わが国でも政治家、財界人、芸能スポーツ人などが占術家の声を聞いているから、一概には批判できないが、尹氏の場合、その程度がひどいとメディアも感じての報道だろう。

「歴代総理のご意見番」「影の指南役」と言われた安岡正篤ぐらいの存在だったら別なのだが。(岩崎 哲)