【韓国紙】“ばら撒き”中毒助長する与党候補

韓国紙セゲイルボ

ポピュリズム公約を連発

韓国大統領選の「共に民主党」候補、李在明前京畿道知事=4日、京畿道(EPA時事)

韓国大統領選で支持率1位を走る共に民主党の李在明(イジェミョン)大統領候補のばら撒き公約が度をこえている。李候補は連日、金を与え税金を下げるという公約を繰り返す。自営業者の新型コロナ被害の完全補償、児童手当て18歳まで拡大、全国民に年100万ウォン(青年は200万ウォン)の基本所得、1住宅者の保有税・総合不動産税・譲渡税減免などを約束した。得票につながるなら何でも出す態勢だ。票と財政を連結させる能力が本当に卓越している。

遂には、脱毛薬とかつら、毛髪移植にまで健康保険を適用するという。国家財政を小遣いと思わなければできないことである。

「私はポピュリストだ」として公にばら撒きを約束するので、大統領になればどれほど過激になるか心配になる。「李候補の選挙運動はポピュリズムのじゅうたん爆撃」との指摘が出るのも当然だ。選挙文化が1950年代の「マッコリ・ゴム靴(で買票する)選挙」の時代に退行したように感じる。

だが、国家財政は“打ち出の小槌”ではない。今年の国家債務は1064兆ウォンを超えて、国内総生産(GDP)の50%に急増した。それでも李候補は公約の財源をどのように用意するのかには関心がない。増税が答えだが、票にならないため最初から選択肢から除外している。増税なき福祉は虚構ということを知らないのか。

問題は強力なポピュリズム指導者が出現すれば、国民のポピュリズム中毒がひどくなるという点だ。ポピュリズムの甘い汁を知った国民が自らそれを断ち切るのは不可能だ。政治家の誘惑は国民の期待と要求のレベルを一層高め、最後には金と福祉を受けることを当然の権利と勘違いするようになる。政権理念の方向に関係なく、ポピュリズムの車輪が回り続けるしかなくなる。亡国への近道だ。

国民の考えを調べて人気を得ることをするのが政治家の課題でない。正しいことをして支持を得ることだ。李候補は新年の会見で、「国力世界5位、国民所得5万ドルに向かって進む」と述べて、経済大統領になると力説した。しかし、ポピュリズム指導者が国運を興した前例はなく、虚(むな)しく聞こえる。信頼を得ようとするなら、ポピュリズム公約から取り除かなければならない。国の借金を返さなければならない未来世代の負担を考えても自制するべきだ。

米国の政治改革家ジェームズ・フリーマン・クラークは、「政治屋は次の選挙を考え、政治家は次世代を考える」と言った。李候補がよく噛みしめるべき名言だ。
(金煥基(キムファンギ)論説室長、1月11日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

ポイント解説

彼を大統領にしてはダメな理由

政権交代を望む韓国民の後押しを受けて、途中まで大統領選のトップを走っていた野党国民の力の尹錫悦(ユンソンニョル)候補が夫人の経歴詐称と本人の失言等によって、急速に支持を落としている。

しかし、これで与党共に民主党の李在明候補が俄然有利になったかと言えば、そうでもない。李候補には記事で指摘されるように大統領資質に問題があるからだ。特に金煥基論説室長が心配しているのは、李候補が繰り出す“ばら撒き”政策だ。もしこれに国民が味を占めるようなことになれば、「ポピュリズム中毒」から抜け出せなくなると危惧する。

李氏が大統領となり、自ら掲げた公約を全部行ったとすれば、財源は増税しかなく、「次世代に大きな負担」を残すことになる。そんな都合の悪いことはおくびにも出さず、李氏は耳に心地いい“金配り”ばかりを吹き込む。理念の別を置いておいても、この人を大統領の椅子に着けるのは国にとってプラスにならない、という切実な判断が記事からもにじみ出ている。

だが、野党の尹氏が再浮上する兆しは今のところない。このまま李氏がトップを守ってゴールするのか。韓国民が固唾をのんで見守っているのが現状だ。

それが、ここに来て、社説でも触れられているように「第3の候補」が急浮上してきた。国民の党代表の安哲秀(アンチョルス)氏だ。これまで2回大統領選に臨み、一定の支持は受けたものの当選にまでは至らなかった。だが、保守でもない左派でもない約4割を占める中間層・浮動層にアピールする力があった。

そこで安氏が集めている票欲しさに、両陣営からアプローチがないとも限らない。特に尹氏は落とした分(支持)を安氏で補うという誘惑にかられるだろう。韓国大統領選がダイナミックな所以である。ゴールまで目が離せない。
(岩崎 哲)