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ハンガリー新政権 前体制解体へ 急進的改革への懸念も

ハンガリーで誕生したマジャル新政権が、オルバン前首相の16年に及ぶ長期政権下で築かれた統治体制を解体し、法の支配を再建する「浄化の炎」作戦を急速に進めている。汚職追及機関の新設、司法・行政高官の入れ替え、国営メディア改革など、国家制度の全面的な刷新を推進する一方、急速な改革や権力集中への懸念も強まっている。(ウィーン小川 敏)

法改正案の可決後、記者会見するハンガリーのマジャル首相=13日、ブダペスト(EPA時事)

「汚職追及」を加速

ハンガリー国民議会は13日、シュヨク・タマーシュ大統領の解任を可能にする憲法改正案を賛成139票で可決した。オルバン氏率いる野党「フィデス・ハンガリー市民連盟」の議員団は抗議のため採決をボイコットした。シュヨク大統領は18日、同改正案に署名し、これを受け、大統領職を退くことが決まった。

マジャル新首相(45)が率いる中道右派政党「TISZA」(ティサ)は4月12日の国民議会選挙(定数199)で141議席を獲得し、憲法改正に必要な3分の2を超える圧勝を収めた。一方、2010年から圧倒的多数で政権を握ってきた右派民族主義政党のフィデスは経済低迷や汚職体質への国民の不満から、83減の52議席と惨敗した。

この結果を受け、マジャル氏は「ティサには国家の抜本的改革を行う明確な信任が与えられた」と勝利宣言し、「浄化の炎」作戦を始動させた。

マジャル政権はまず、過去20年間にわたる公金の不正流用を調査するため、独立した反汚職機関である「国家資産保護・回復庁」を新設。そして関連法を改正し、不正に流出した国家資産の追跡と没収を可能にする法的基盤の整備に乗り出した。

次は、オルバン前首相によって任命された高官の解任だ。その対象には、シュヨク大統領のほか、憲法裁判所長官、検事総長、最高裁判所長官なども含まれる。彼らは、失脚した前政権首脳の政治的意志を忠実に実行する人物と見なされており、マジャル氏は彼らを「オルバンの操り人形」と呼んできた。

そして、前政権下で「プロパガンダ機関」と化していた国営・公共放送の統制を解体し、監視委員会を設置。政治的な偏向を防ぐため、運営や資金調達を外部から監視する独立した委員会を立ち上げ、「メディアの自由」の回復を目指している。マジャル首相は「『浄化の炎』作戦を通じて、われわれは過去16年間にわたり国を支配してきた政治的・経済的なマフィアの支配から、この国を解放する」と豪語している。

なお、マジャル新政権が誕生して以降、ハンガリーと欧州連合(EU)の関係は急速に正常化してきた。欧州委員会は5月29日、オルバン前政権の「法の支配の侵害(汚職や司法への介入)」を理由に凍結していた164億ユーロ(約2・7兆円)以上の補助金・融資の凍結解除を正式に発表した。マジャル新政権が汚職対策機関の権限強化や司法の独立など、迅速なシステム改革に着手したことへのEU側の評価だ。

■専制政治の恐れも

一方で、マジャル政権の急速な改革テンポに対して、懸念の声も聞かれる。例えば、シュヨク大統領を解任することは危険な前例を作りかねない、との批判だ。人権団体アムネスティ・インターナショナル(AI)は「シュヨク氏には適正な法的手続きを受ける権利がある」と表明している。それに対し、マジャル氏は改革のテンポを緩める考えはない。世論調査機関「21リサーチ・センター」が5月に行った調査によると、ハンガリーの有権者の67%がシュヨク氏の辞任を望んでいる。

マジャル首相は近い将来、包括的な新憲法を起草し、それを国民投票を通じて採決する意向を表明している。オルバン前政権が11年に制定した現行の憲法(根本法)を廃止し、全く新しい民主的な国家の憲章を制定する意向だ。マジャル氏によると、新憲法は単に前政権の負の遺産を清算するだけでなく、司法の完全な独立、基本的人権や報道の自由の再定義、地方自治権の強化、環境保護など、国家の在り方すべてを網羅した包括的な内容という。

新首相が「浄化の炎」作戦という言葉を選んだのは、それが単なる政治闘争ではなく、「ハンガリーという国家の魂を清めるための、正当で道徳的なプロセス」という意味合いを国民にアピールする狙いがあるのだろう。

なお、ハンガリー問題の専門家ペーター・テへット氏は14日、オーストリア国営放送の夜のニュース番組で「新政権が民主的な複数政党制の社会を実現しようとしているのか否か現時点では不明だ」と指摘し、議席3分の2を占める与党が専制政治に走るのではないか、と懸念を表明していた。

ハンガリー国民議会には目下、マジャル政権の政策に再考を促すことができる勢力はない。憲法改正の議論もスピーディーに推進される。それだけに、暴走の恐れがまったくない、とはいえない。「浄化の炎」が与党側にも飛び火しないことを願うばかりだ。

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