トップ国際欧州ポーランドとウクライナ、歴史認識巡り関係悪化 対露連携に影落とす

ポーランドとウクライナ、歴史認識巡り関係悪化 対露連携に影落とす

記者会見で発言するポーランドのカロル・ナヴロツキ大統領=5月13日、ルーマニア・ブカレスト(EPA時事)

ロシアのウクライナ侵攻後、ポーランドは多くのウクライナ難民を迎え入れ、人道支援を惜しまなかった。しかし今、第2次世界大戦中の歴史認識を巡り、両国関係に新たな緊張が生じている。発端は5月末、ウクライナのゼレンスキー大統領が、ロシアと戦う自国の精鋭特殊部隊に対し、ウクライナ蜂起軍(UPA)の英雄にちなんだ名誉称号を授与する大統領令に署名したことだった。(ウィーン小川 敏)

勲章の返上相次ぐ

UPAは、1942年に設立され50年代まで活動したウクライナ民族主義者組織(OUN)の傘下組織だ。UPAのメンバーは第2次世界大戦中、現在のウクライナ北西部のボリーニ地方で最大10万人のポーランド系住民を殺害した。この地域は39年までポーランド領であり、ヒトラー・スターリン協定によってウクライナ・ソビエト共和国に編入された。

ゼレンスキー氏が自軍の部隊にUPAの称号を授与したと報じられると、カロル・ナブロツキ大統領は19日夜、「虐殺者を英雄視している」として強く反発。ビデオメッセージで最高勲章(白鷲勲章)の剥奪を発表し、「ウクライナがこれらの犯罪を美化する決定を下したことは言語道断だ。われわれの歴史的記憶を侵害するだけでなく、長年にわたって両国間で築かれてきた信頼関係を損なうものだ」と指摘した。

UPAは「ウクライナの独立国家樹立」を究極の目標に掲げ、そのためには手段を選ばず、ナチス・ドイツ、ソ連(赤軍)、ポーランド武装勢力の全てを敵に回して三つどもえの凄惨(せいさん)なゲリラ戦を展開した。

その歴史的評価は国によって大きく異なる。ウクライナでは独立のために戦った「英雄」として名誉回復が進む一方、ポーランドでは反ソ連の立場に理解を示しつつも民間人虐殺の責任を問う声が根強い。ロシアはこれを「ナチス協力者」の例として利用し、ウクライナ侵攻の正当化に活用している。

ウクライナ大統領府長官のキリロ・ブダノフ氏は先月20日、ナブロツキ氏の行動をウクライナ国民に対する非友好的な行為であり、侵略国であるロシアへの贈り物だと非難した。ワルシャワの措置は「ウクライナ国民全体に対する侮辱行為」だと主張した。

ナブロツキ氏による「白鷲勲章」剥奪発表の翌日、ゼレンスキー氏は勲章を郵便でポーランドへ返送した。シビハ外相やブダノフ氏など、これまでにポーランドから勲章を授与されていた政府高官らも、ナブロツキ氏の措置を「不当だ」として相次いで自らの勲章を返上する事態へ発展した。歴代大統領の一部にも同様の動きが広がり、両国関係は急速に険悪化している。

自制を求める声も

背景にはポーランド国内政治もある。ナブロツキ氏は国家保守主義の野党「法と正義」(PiS)に近く、2025年の大統領就任以来、ウクライナに対して批判的な姿勢を貫いてきた。ウクライナの欧州連合(EU)および北大西洋条約機構(NATO)加盟に反対し、ウクライナ難民への支援プログラム延長法案を阻止した。度重なる招待にもかかわらず、ウクライナの首都キーウを訪問したことは一度もない。EUの過度な介入に懐疑的であり、ポーランド国内の中道・親EU派であるドナルド・トゥスク首相の現政権とは激しく対立している。

トゥスク氏は、ナブロツキ氏とゼレンスキー氏に対し、自制を求め、「ポーランドとウクライナの紛争はクレムリン(ロシア大統領府)のプーチン大統領を喜ばせ、同盟国を驚かせている。感情を抑え、緊張を高めるべきではない」と訴えた。

こうした緊張の中、6月25、26両日にポーランド北部グダニスクで「第5回ウクライナ復興会議(URC2026)」が開催された。エネルギーインフラの強靱(きょうじん)化や投資の呼び込み、防衛産業の協力が議題。ゼレンスキー氏に代わってスビリデンコ首相が参加した。

会議は本来、戦争対応、安全保障、経済的パートナーシップといった建設的な議題に焦点を戻す場として組織された。だがナブロツキ氏が会議の直前に勲章剥奪を強行したため、表向きの支援継続の姿勢の裏で、「歴史問題のトゲ」が公の議論の雰囲気を冷え込ませ、対露連携に影を落とす形となった。

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