6月下旬に入りフランスを40度を超える猛暑が襲った。数々のイベントが延期や中止に追い込まれ、医療機関は熱中症の患者でコロナ禍に匹敵する飽和状態になった。熱波はひとまず収まったものの、表面化した課題は残ったままだ。(パリ安倍雅信)

熱波襲来による40度を超える猛暑で、さまざまな催し物が中止や延期を余儀なくされた。パリのパトリス・フォール警視総監は26日、性的少数者による「プライドパレード」、陸上競技大会などの延期や中止を発表した。また、週末にパリで予定されていた「大規模な」デモの中止を要請した。
パリ警視庁は、「6月21日から続いている異常な猛暑」が、「救急サービスや医療施設に負担をかけている」と説明。「主催者が中止に同意しない場合、政令によって強制的にイベントを禁止する」と警告した。
一方、リスト保険相の事務所は、「全国各地で自宅での死亡が相次いでいることを懸念している」と表明。「熱波に直接起因する死亡に関する包括的な数字は把握していない」としながらも、フランスで約1万5000人の死者を出した2003年の熱波に匹敵するとの見方を示した。
保健当局は、暑さの影響が表れるまでに数日かかる可能性があるため、現時点では死亡者数の推定値を示すことはできないが、一部当局者はすでに死亡者の急増を警告している。
パリのジョルジュ・ポンピドゥー病院の医長は「おそらく亡くなる人は、病院に到着する前に亡くなっているのだろう」と指摘、「極めて深刻な」状況にあると述べた。
03年の猛暑では、多数の独居高齢者が熱中症により室内で死亡し、高齢者施設でも多くが亡くなった。以来、ホームヘルパーが定期的に自宅を訪問したりして、水分補給を施しているが、フランスのエアコン普及率は20%と欧州でも特に低く、温暖化対策でエアコン普及が制限されていることが問題視されている。
猛暑による「医療システムの逼迫(ひっぱく)」に直面し、ルコルニュ首相とリスト保健相は26日、医療緊急対応計画(通称「オルサン計画」)の猛暑警戒レベル3を発動することを決定した。ルコルニュ氏によれば、これは「医療動員の最高レベル」に相当する。
保健省は「今後数日間で気温が下がると予想されるものの、熱が体に及ぼす影響は数日後に表れる可能性があり、そのため体への負担は高いままとなるだろう」と指摘した。
中学校修了国家試験(ブルベ)と高校修了試験(バカロレア)も影響を受けている。ジェフレイ国民教育相は26日、「口頭試験、筆記試験とも午前中のみ」と、両試験のスケジュール見直しを発表した。
交通機関も影響を受けている。パリ・ロンドン間を走る高速鉄道ユーロスターでは24日、列車で故障が起き、乗客は40度の猛暑の中、空調の止まった車内に閉じ込められた。高温による線路のゆがみでダイヤも大幅に狂った。
仏南西部ピソで23日、観測史上最も高い44.3度を記録した。首都パリでも37度を超え、セーヌ川や遊泳が解禁されたサンマルタン運河では、多数の市民が飛び込み泳ぐ姿が見られた。エッフェル塔やルーブル美術館は夕方の暑さのピークを避けるため、開館時間を短縮した。
全国で水難事故が多発し、川で急流にのみ込まれるなどして6月だけで計55人が水死。パリでは多くのアパートにある屋根裏部屋(通称メイド部屋)で住民が死亡する悲劇も起きている。学生や低所得者の多い屋根裏部屋だが、高温に達した亜鉛の屋根の下で熱中症による死亡リスクが高まっている。
猛暑を引き起こした熱波は28日に収まり、29日には警報が解除された。だが、熱波が影響した健康被害の危険性は依然として残っている。
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