ハンガリーのマジャル新内閣が12日、発足した。閣僚は全員がマジャル・ペーテル首相率いる中道右派与党の「ティサ(尊重と自由)」所属だ。16年間君臨してきたオルバン・ビクトル前首相(62)のロシア寄り路線から親欧州連合(EU)への転換を掲げる新政権の外交の顔にはオルバン・アニタ女史(51)が就任する。(ウィーン小川 敏)

ティサは4月12日の国民議会選挙で、2010年から圧倒的多数で政権を握ってきたオルバン前首相率いる右派民族主義政党「フィデス・ハンガリー市民連盟」に圧勝した。ティサは憲法改正が可能となる総議席の3分の2を上回る141議席を獲得。一方、フィデスは経済低迷や汚職体質への国民の不満から、83減の52議席で惨敗した。
前首相はEUのウクライナ支援を拒否する一方、ロシアへの制裁に反対。プーチン大統領とはクレムリンで何度も会談してきた親露派だ。また、反移民政策を標榜(ひょうぼう)し、欧州政界での右派政党の台頭を後押しし、EUからは「欧州の異端児」と呼ばれてきた。24年7月、欧州議会で独自の会派「欧州のための愛国者(PfE)」を創設するなど、欧州政界で絶大な影響力を誇ってきた。
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新政権は、16年間のオルバン政権が残した「負の遺産」の清算を課題に掲げている。内政では、まず汚職対策、そして汚職によって失われた国家資産と税収の回収が課題となる。また、財政健全化も大きな課題だ。ハンガリーの財政赤字は国内総生産(GDP)比6.8%に達するなど、EUが定める上限3%を大幅に超えている。
マジャル氏はまた、メディアの全面的な改革を発表している。オルバン政権に好意的な報道を行っていた公共放送のニュース番組を政権発足後直ちに停止し、新たなメディア法を制定すると明言した。フィデスは、法、規制、経済を巧みに利用し、メディア市場の約80%を直接的または間接的に支配してきたとされる。
一方、対外政策の最大の課題はEUとの関係改善だ。マジャル氏は「ハンガリーの民主主義を強化し、立法、行政、司法の三権分立体制を回復する」ことを約束。オルバン政権下の親露政策の修正を示唆する一方、EUとの関係改善に乗り出す意向を強調した。政府は財政強化のため、主に数十億ユーロ規模のEU資金の拠出に期待を寄せている。欧州の基本的価値観の軽視と法の支配の欠如を理由に、EUはハンガリーへの約170億ユーロ(約3兆1000億円)に上る資金を凍結してきた。
新政権はまた、EUだけでなく北大西洋条約機構(NATO)加盟国として、再び信頼できるパートナーと見なされることを目指し、積極的な外交を展開する予定だ。手始めに、マジャル氏はウクライナのゼレンスキー大統領との会談を計画している。
欧州委員会のフォンデアライエン委員長はティサの勝利が確定した先月12日、「ハンガリーの国民はEUを選択した。この国では今、欧州の心がより強く鼓動している」と述べ、親EU派ティサの勝利を歓迎した。
新政権の外交の顔はオルバン新外相だ。エネルギー安全保障の専門家で、シンクタンクや官民の重要ポストを歴任した国際政治経済のスペシャリストだ。米国の名門タフツ大学で歴史学修士号、フレッチャー法律外交大学院で国際法・外交の博士号を取得した。ロシアがエネルギーを地政学的武器として利用するリスクについて早くから警告してきた。
オルバン外相は明確な親欧米・大西洋主義路線を掲げている。独週刊誌シュピーゲルは4月30日号で新外相について「ロシアとの関係を整理することが最大の課題」と報じている。
ハンガリーはエネルギー政策で完全にロシアに依存してきた。80%以上をロシア産原油・天然ガスに依存する一方、ロシアの財政・技術支援を受けて原子力発電所「パクシュ2」の増設プロジェクトを進めてきた。このプロジェクトについては契約内容を全面的に見直す方針が打ち出されている。
オルバン外相は議会で、「ロシアは今後もパートナーであり続けるが、一方的な依存であってはならない」と明言し、安全保障上の観点からも見直しが必要との立場を示した。





