ホルムズ海峡の安全に関与しない欧州にいら立つトランプ米大統領は、ドイツに駐留する米兵のうち5000人を年内に削減することを明らかにした。さらにイタリアやスペインでも同様の措置を取る可能性を示唆した。米国と欧州の亀裂は過去最悪とされ、北大西洋条約機構(NATO)の同盟関係の見直しも指摘されている。(パリ安倍雅信)

トランプ氏は、イラン攻撃の出口が見えない中、ホルムズ海峡の安全確保に非協力的なNATO主要加盟国、英国、ドイツ、スペイン、イタリアなどにいら立ちを隠していない。特に欧州に駐留する米軍約6万8000人のうち、約半数の3万6000人が駐留するドイツへの風当たりは強い。
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ドイツには敗戦後の東西冷戦時代に25万人規模の米駐留部隊がいたが、長期的には大幅な削減の流れにある。だが、米軍は欧州東側の守りの中心であり、今はウクライナ戦争で北欧やバルト3国も視野に重要な防衛の役割を担っている。さらに中東、アフリカでの作戦の中枢も担っている。欧州最大の軍人病院があり、NATOのグローバル作戦のハブ的存在だ。
ドイツは、米国の核抑止力や情報共有といった側面で、米国との依存関係を維持する考えを見せていた。ところが、経済的困難の続くドイツにイラン紛争によるダメージが顕在化したことで、トランプ政権への非難が出るようになった。
第1次トランプ政権では、9500人の米兵撤退計画を発表したが実行されず、続くバイデン米政権は計画を中止した。しかし、今回の5000人撤退の発表は、イラン紛争から距離を置く他のNATO加盟国への圧力にもつながっている。実際、米国は、欧州から輸入される乗用車とトラックへの関税を15%から25%に引き上げると表明した。
一方、スペインのサンチェス左派政権は、米側による再三のNATO分担金の増額要請を無視しただけでなく、米国のイラン攻撃そのものに「国際法違反」「戦争ノー」「文明に対する攻撃」と厳しく批判し、軍事介入拒否の姿勢を貫いている。
トランプ氏は報復として、スペインを「ひどい同盟国」と批判し、全貿易の打ち切りを警告した。
一方、トランプ氏の信頼が欧州指導者の中で最も厚いとされるイタリアのメローニ首相も、ドイツ同様、対米関係を維持しながらも、国益優先の国家観を堅持しており、米国によるイラン攻撃以来、トランプ氏とは距離を取りつつある。また、イラン攻撃のきっかけといわれるイスラエルのネタニヤフ政権の強硬姿勢も正面から批判している。
メローニ氏はバチカンの教皇レオ14世の「武器を捨てるように」という警告をトランプ氏が批判したことについて「容認できない」と反発した。ただ、政権の座に就いて以来、さまざまな局面で柔軟な姿勢を保っており、親米を維持しながらもトランプ政権と距離を置く姿勢は国民に支持されている。
一方、フランスのマクロン大統領は、イラン危機を契機にNATOの欧州加盟国の自立主権の方向を先頭に立って模索している。マクロン氏の構想は米国に依存しない欧州主権を樹立することにある。第2次世界大戦で連合国側だったフランスは、欧州の自立を目指す主張を繰り返し、核兵器保有国としての自立意識もある。
さらに欧州で最も米国との関係が緊密といわれる英国のスターマー首相も、「他のNATO加盟国への通告なしに米国が始めたイラン攻撃には加わらない」と発言し、トランプ氏の怒りを買っている。
イラン、ウクライナ、パレスチナ自治区ガザと紛争の長期化で世界が激変する今、トランプ離れが進んでいる。ただ、米国に非協力的な英仏独は、米国と共にイランの核武装を防ぐための核交渉を進めた過去がある。トランプ政権の主張するイランの核武装阻止は、英仏独も共有しており、今後も駆け引きが続きそうだ。





