トップ国際欧州マクロン仏政権、勢い増す欧州主権強化戦略 強まる自主防衛への世論

マクロン仏政権、勢い増す欧州主権強化戦略 強まる自主防衛への世論

3月2日、フランス北西部ロング島で演説するマクロン大統領(AFP時事)

 フランスのマクロン大統領は、長年主張してきた欧州の独自防衛体制構築、原発回帰で主導権を握ろうとしている。任期はあと1年、マクロン氏が進める欧州主権の確立に追い風が吹いている。皮肉にも追い風はトランプ米政権によるイラン攻撃でますます強くなり、自主防衛、自主エネルギー調達への世論も強まっている。(パリ安倍雅信)

 トランプ米大統領によるイラン攻撃が国際的な批判を招く中、欧州は自主防衛戦略の強化へと舵(かじ)を切っている。中でもフランスは長年、自主防衛を志向し、核兵器を保有しつつ北大西洋条約機構(NATO)の意思決定から距離を置いてきた。

 フランスが最後の核実験を行ったのは1996年1月。当時は日本を含む国際社会から強い批判を受け、国内でも反対が賛成を上回った。実験の目的は核抑止力の強化だったが、現在はロシアの核の脅威が高まる中、健康被害や環境汚染への懸念とは別に、国防上の「必要悪」とする評価が広がっている。

 マクロン氏は2025年2月末、欧州規模の核抑止に関する対話への支持を初めて表明し、今年3月2日には「今後半世紀は核兵器の時代になる」と述べ、核戦略の転換を示唆した。米国とイスラエルがイラン攻撃を開始した直後だった。仏国民には理想より現実を重視する傾向があり、核抑止力を主権と安全を守る最後のとりでと捉える見方が強い。

 ロシアの脅威がウクライナを超えて欧州連合(EU)に及ぶ中、ドイツのメルツ首相は、フランスの核抑止力を欧州全体の安全保障として共有・拡張すべきだと主張する。ドイツはNATO依存からの部分的脱却を視野に「欧州核の再設計」を模索するが、フランスは、核使用の最終決定は大統領に限るとし、議論は始まったばかりだ。

 フランスの核を欧州全体の抑止力へ発展させる試みは、主権問題を除けば同国にとって必ずしも不利ではない。米国のNATO離れが取り沙汰される中、「ポストNATO」を見据えた欧州安全保障の再設計は、マクロン氏にとって追い風だ。ただしEUが一枚岩でない現状では、核使用権限の移譲には依然高い壁がある。

 一方、イラン情勢の悪化で化石燃料の供給が逼迫(ひっぱく)する中、フランスは電力の約7割を原子力に依存し、化石燃料への依存度は低い。それでも、ロシア産の安価なガスが途絶えた影響で、産業用から自動車用まで輸入燃料価格の高騰が続き、輸送コストの上昇も重なってインフレ圧力にさらされている。

 18年秋以降には燃料価格の上昇を背景に「黄色いベスト運動」が長期化した経緯もあり、政府は警戒を強める。フランスは原発電力を原発ゼロのドイツに輸出する余力を持つ一方、液化天然ガス(LNG)についてはアゼルバイジャンやトルコ経由に加え、旧植民地アルジェリアからの調達も模索し、国内4港で受け入れ体制を強化している。

 欧州委員会のフォンデアライエン委員長は先月10日、革新的な原子力技術への財政支援と、30年代初頭の稼働を目指す小型モジュール炉(SMR)戦略を発表した。「低炭素で安定した電源である原子力を敬遠してきたのは戦略的誤りだった」との認識も示した。

 パリでの原子力サミットでフォンデアライエン氏は、1990年には欧州電力の3分の1を占めた原子力が、現在は約15%に低下したと指摘。資源に乏しいEUにとって、原発は再生可能エネルギーと組み合わせることで安定供給を実現する重要な基盤だと強調した。

 マクロン氏も同サミットで、イラン情勢を踏まえ「より自立したエネルギー供給のため、次世代原子炉の開発を加速する」と表明。フォンデアライエン氏は、SMR戦略の一環として民間投資を促すため、2億ユーロ(約370億円)の保証を設けるとした。

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