トップ国際欧州動きだした欧州核共有戦略 米国依存から脱却へ

動きだした欧州核共有戦略 米国依存から脱却へ

フランス製戦闘機「ラファール」(仏国防省提供)=撮影場所不明(EPA時事)
フランス製戦闘機「ラファール」(仏国防省提供)=撮影場所不明(EPA時事)

フランスのマクロン大統領は、核兵器保有国として欧州各国に新たな核抑止戦略を提案した。ロシアやイランの脅威が現実味を増す中、米国依存から脱却する鍵の一つが核防衛の増強にあるとの認識を示し、すでに欧州8カ国が合意したという。米国が主導する核抑止戦略の転換を目指すマクロン氏の真意は何か、世界の核防衛戦略に影響を与えそうだ。(パリ安倍雅信)

 マクロン氏は2025年2月末、欧州規模の核抑止力に関する対話を支持することを初めて表明し、衝撃を与えた。1年後の26年3月2日には、仏西部ロング島の海軍基地で、「これから半世紀は核兵器の時代になる」との認識を示し、核戦略の転換を表明した。米国とイスラエルがイラン攻撃を継続する最中だった。

 北大西洋条約機構(NATO)の欧州加盟国は現在、米国が保有する核弾頭の共有による核防衛体制を敷いている。だが、内向きのトランプ政権は欧州加盟国に相談することなく独自の軍事戦略を行使する傾向が強く、欧州諸国には「果たして米国は欧州を守るつもりがあるのか」という疑問と懸念が広がっている。

 マクロン氏は英国、ドイツ、ポーランド、オランダ、ベルギー、ギリシャ、スウェーデン、デンマークの計8カ国が、フランスの核抑止力提案に合意したことを受け、核弾頭を増加させる方針を打ち出した。同時に核兵器を搭載したフランス軍機を欧州連合(EU)域内に展開する構想を示した。ただ、フランス外に仏製核兵器が配備されても、使用権限はマクロン氏だけが有するとしている。

 欧州で核兵器を保有するのは英国とEU内ではフランスのみだが、ドイツをはじめ、フランスの核の傘に入ることに積極的な意見は増えている。

 フランスの核弾頭は冷戦末期の約540発がピーク、現在は核軍縮に舵(かじ)を切り、約290発まで減少している。今回、増加に舵を切ったことは、大きな方向転換と言える。1960年から自国の自主防衛の柱として核を保有したフランスとしては、当時のドゴール大統領の「欧州の独自防衛の中心的役割を担う」との構想実現の機会が到来した形だ。

 無論、核戦力の有効性を疑う声もある。右派・国民連合のマリーヌ・ルペン氏は、核抑止力を欧州に拡大することは主権の放棄につながると強く批判している。フランスを代表するシンクタンク、仏国際関係研究所のトマ・ゴマール所長は、近年の激変する世界を分析し、「核抑止が機能しないシナリオも浮上している」と指摘している。

 一方、英国は2025年6月に発表した防衛戦略見直しで、今後10年間、ロシアの核がNATOにとって最大のリスクとの認識を示した。最大12隻の攻撃型原潜を建造し、核弾頭計画に150億ポンド(約3兆1600億円)を支出するとした。とはいえ、英国の核抑止力は米中露に及ばず、米国に相当程度依存している。

 フランスは、欧州の安全保障環境の悪化に対応し、核抑止ドクトリンを転換させた。主な目標は、兵器の近代化、同盟国を守るための「核による先進抑止力」の増強だ。核弾頭を何発増やすかの目標数値は示していないが、核ミサイルを搭載したラファール戦闘機を欧州のパートナー国の基地に「特定状況下で配備」することを検討している。

 欧州で米国の核が配備されているのは、ドイツ、イタリア、ベルギー、オランダ、トルコだが、これらの国はフランス製核配備に前向きだ。具体的には原潜とラファール戦闘機による核ミサイル配備、欧州各国での核演習が提案されている。核使用権をフランスの大統領に残す方針は、欧州およびフランス主導の防衛体制を意味する。

 米国のイラン攻撃が失敗した場合、米国のプレゼンスは急速に減退し、各国、各地域の自主防衛論が今以上に浮上する可能性もある。その事態を念頭に置いたマクロン提案との見方もある。

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