トップ国際欧州英スターマー政権のジレンマ (上) 中国大使館承認に根強い批判

英スターマー政権のジレンマ (上) 中国大使館承認に根強い批判

1月29日、北京で握手を交わす中国の習近平国家主席(右)と英国のスターマー首相(AFP時事)
1月29日、北京で握手を交わす中国の習近平国家主席(右)と英国のスターマー首相(AFP時事)

 中国の在英大使館の建設が承認された。ロンドン中心部のタワーハムレット区にある旧王立造幣局(ロイヤルミントコート)跡地に建設される。地下に200以上の部屋やトンネル敷設が計画され、土地は中国政府が2018年に約2億5500万ポンド(約540億円)で購入していた。地元区議会は22年、住民の安全の懸念、テロリスク、抗議デモによる混乱を理由に申請を否決するなど長年紛糾した。(ウィーン小川 敏)

 しかし24年の労働党政権への交代後、中国の習近平国家主席がスターマー首相に直接、介入を要請。政府は決定権を地元から引き継ぎ、独自審査を開始した。25年までは安全保障上の精査を理由に決定を複数回延期したが、今年1月20日、「リスクは管理可能」と判断して承認に踏み切った。

 承認のタイミングが注目を集めた。スターマー氏は1月末に18年以来となる英首相訪中を実現し、習氏と会談。金融・医療・サービス分野での市場開放や協力強化で一致した他、英市民の中国入国時30日以内のビザ免除でも合意した。英政権は「中国が現在ロンドンに分散保有する七つの外交拠点を、新大使館で1カ所に集約すれば、監視・管理が効率化される」と説明。情報機関の見解を踏まえた現実的な判断だと強調した。

 一方で批判は根強い。予定地近くには金融街の重要光ファイバーケーブルが通っており、スパイ活動やサイバー攻撃の拠点化リスクが指摘されてきた。トランプ米大統領はスターマー氏の対中接近を「非常に危険」と公然と批判した。英国内でも、香港民主派や地元住民による法的措置の動きがあり、建設遅延の可能性が残る。

 英国の対中政策は歴史的に揺れ動いてきた。15年のキャメロン政権下では両国関係の「黄金時代」が宣言され、経済協力を最優先したが、香港国家安全維持法の導入、新疆ウイグル自治区の人権問題、ファーウェイの5G排除などで20年以降冷え込んだ。今年早々、スターマー氏は8年ぶりの首相訪中で関係リセットを図ったが、安全保障と経済実利のはざまで苦悩は続いている。

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