トップ国際欧州フランス、メルコスル貿易協定に反対  安価な農産物流入に懸念

フランス、メルコスル貿易協定に反対  安価な農産物流入に懸念

フランスのマクロン大統領=2025年10月9日、パリ(AFP時事)
フランスのマクロン大統領=2025年10月9日、パリ(AFP時事)

 昨年末から農業従事者の激しい抗議運動が続くフランス。マクロン大統領は南米南部共同市場(メルコスル)諸国との自由貿易協定(FTA)の承認に反対を表明した。農業関係者は、欧州連合(EU)が定める厳しい規制を守らない安価な南米の農産物が流入すると反発しており、南米農産物に対する欧州市場への開放が促進されるのか、その行方が注目を集めている。(パリ安倍雅信)

 EUは25年前から、ブラジルなどが加盟する関税同盟メルコスルとのFTA交渉を行ってきた。

 承認されれば、世界最大規模の市場が生まれ、久々に大西洋経済圏に活気が戻ることになる。協定の本質は、数年をかけて両経済圏の間で関税の大部分を撤廃することにあり、特に欧州からの工業製品の輸出を促進するとともに、南米の農産物に対する欧州市場への開放を促進する。

 フランスの農業従事者が特に懸念しているのは、小規模農家への経済的ダメージだ。同国の食品の安全基準は、世界一厳しいといわれ、農産物の生産コストは当然上がる。安価で規制の緩いメルコスル産農産物がEUになだれ込んだ場合、域内の農業保護、メルコスルの規制への不信感などさまざまな面で悪影響が及ぶと懸念されている。

 フランスはEUを代表する農業国だ。農業、林業、漁業の付加価値は国内総生産(GDP)の約1・5~1・9%、農業が雇用に占める割合は約2・5%と高くはないが、生産規模はEU全体の約20%を占め、国土の約50%超が農地だ。さらにフランスの農家はEUが定める規制を厳格に守ってきた。

 フランスをはじめとする複数の国が反対を表明し、欧州の農業団体が激しく抗議したにもかかわらず、EU加盟国は今月9日、各国の人口などを勘案した特定多数決でメルコスル諸国とのFTAを承認した。協定にはドイツ、スペインと並び、EUでの影響力を増すイタリアも支持に回った。

 イタリアは車をはじめ、工業製品を関税なしでメルコスル諸国に輸出できるメリットが大きいと判断した。

 フランス以外ではアイルランド、オーストリア、ポーランドが反対。特にフランスの農業部門では深刻な懸念が広がっている。年末年始、農業組合では抗議活動や封鎖活動が組織され、パリのエッフェル塔などにトラクターが集結、環境・健康基準の制約が緩い輸入品を前に、この協定が欧州の農業に悪影響を及ぼすと非難した。

 最近の世論調査によると、フランス人の4人に3人以上が、農業、消費者、環境へのリスクを理由に協定に反対している。反対票を投じたフランスは、今後数週間以内に採決が行われる欧州議会で、引き続き政治的攻防を続ける方針だ。複数の欧州議会議員が既に反対の意向を表明しているため、採決は接戦になる可能性が高い。

 EU欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、合意は「EUの国際貿易を強化し、経済関係を多様化し、中国や米国といった市場への依存を減らすための戦略的ステップ」と説明している。欧州委はまた、欧州の農家を支援するための共通農業政策(CAP)基金への早期アクセスなど、付随措置を提案している。

 中南米への中国の急激な進出を警戒するトランプ政権の強硬外交もメルコスルに影響を与えている。ブラジルは米国向けの鉄鋼やアルミなどに10%から50%規模の関税がかけられ、EUとのFTA推進を急ぐ要因となっている。

 自由貿易体制に米国が逆行する中、同じ米国の保護主義を批判するEUとFTAを締結する意義は大きい。メルコスル内では米国を安定的な貿易パートナーとする見方が薄れ、特にブラジルなどはEUやアジアとの自由貿易推進の必要性が議論されている。そのチャンスを見逃さない中国は、南米投資を拡大中だ。

 確かなことは、南米が米国依存を縮小させる動きに出ていることだ。今回の米国によるベネズエラ攻撃は、中南米に大きなインパクトを与えた。EU・メルコスルのFTAは最終的に欧州議会での採択で決定される。今後数週間にわたる激しい議論が予想され、さらなる農業部門への譲歩が必要という意見が優勢とみられている。

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