トップ国際欧州続く「決められない政治」 フランス 中道弱体化、多党化の時代

続く「決められない政治」 フランス 中道弱体化、多党化の時代

11月27日、フランス南東部グルノーブル郊外で演説するマクロン大統領(EPA時事)
11月27日、フランス南東部グルノーブル郊外で演説するマクロン大統領(EPA時事)

 2017年に左右の政治勢力の対立構造を嫌い、政界再編により中道を選んだフランスは、今再び、中道勢力の弱体化、勢力が拮抗(きっこう)する多党化時代を迎え、「決められない政治」が続いている。(パリ安倍雅信)

 27年の大統領選に向け、右派、左派、中道それぞれが選挙モードに入りつつある。すでにメディアには、裁判で有罪判決を受けた中道右派のサルコジ元大統領、07年にサルコジ氏と決選投票を戦った社会党(PS)のセゴレーヌ・ロワイヤル氏、右派・国民連合(RN)のマリーヌ・ルペン氏など、なじみの政治家の名前が挙がっている。

 現在、右派、左派、中道ともに過半数の議席を持つ政党が存在しないハングパーラメント(宙づり議会)状態で、来年度予算を決めるのにも苦戦している。マクロン現大統領の最新の支持率は歴代最低の15%前後と低く、仮にウクライナ戦争がウクライナ側の敗戦で終われば、防衛費増大などの責任から27年の任期満了前の辞任の可能性も指摘されている。

 ドゴール元大統領の手で始まったフランスの第5共和制(1958年~)は過去最大の危機に直面している。

 有権者が求めているのは、何を継承するかではなく、第5共和制との決別や抜本的修正だ。投票を棄権する有権者は増加の一途をたどっており、圧勝して大統領になる流れは途絶えている。

 皮肉にも大統領権限を強化した第5共和制は、合意形成型の議会軽視、意思決定の不透明感につながり、大統領就任以来、「決めるのは私」が口癖だったマクロン氏は、「決められない」状況を自らつくり出している。

 極右勢力や極左勢力の中には、第5共和制の制度を維持しながらも、憲法を改正し、移民法改正などで国民投票を実施し、より議院内閣制的・参加型民主主義へ移行する主張もある。次期大統領選の最大のテーマは「決断できる国家」と「納得できる民主主義」が両立するのかを問う選挙になる可能性が高い。

 フランスは主権主義強化の流れにあり、納得できる民主主義を追求する左派よりも決断できる国家を追求する右派勢力に追い風が吹いている。リビア資金疑惑で有罪判決を受けたサルコジ氏の名前が挙がるのは、秩序、権威、決断を体現した最後の大統領とのイメージがあるからだ。特に移民問題、治安問題での実績が注目されている。

 とはいえ、右派のルペン氏、中道・エリートのマクロン系候補者を嫌う有権者がサルコジ氏に投票するかどうかは極めて不透明だ。外交力が問われるフランスの大統領として、国際交渉力に定評のあるサルコジ氏だが、左右両陣営の中に敵も多い。

 ルペン氏は過去の大統領選で2度も決選投票に進出した実績を持ち、極右候補として仏史上最高得票を得た。現在は国民議会(下院)の第3勢力を率いている。歴史的進化を遂げてきたルペン氏は、過去の敗北から「怒り」より「生活」、「イデオロギー」より「実務」を重視する候補へ変貌し、制度内での熟練した政治家をアピールしている。

 他の欧州諸国の右派ポピュリズム政党から脱皮し、最も政権政党になり得る可能性が高いRNだが、フランス政治における「極右の壁」が消えたわけではない。極右勢力のイデオローグと言われるフランスのための運動(MPF)の元党首のドビリエ元欧州議会議員や極右政党率いるエリック・ゼムール氏は、キリスト教復興を前面に出しており、宗教と距離を置くRNとは異なる。

 次期大統領選は、過去にない国家モデルの立て直しが求められており、有権者も難しい選択を迫られる可能性が高い。物価高、エネルギー問題、格差是正が実感できない、年金や最低賃金問題、失業問題、治安・麻薬問題、移民問題など内政の課題に加え、欧州連合(EU)での存在感、ウクライナ戦争、イスラエル紛争、対中貿易問題など外交課題も争点となり得る。

 いずれにせよ、大革命以降、最もフランスが重視すべき価値観を巡る議論がすでにヒートアップしている。

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