トップ国際欧州フランス主権主義の静かな鼓動 注目集める右派ドビリエ氏  27年大統領選へ支持拡大

フランス主権主義の静かな鼓動 注目集める右派ドビリエ氏  27年大統領選へ支持拡大

大統領候補に指名され、演説する「フランスのための運動」(MPE)のフィリップ・ドビリエ党首(当時)=2006年12月9日(UPI)
大統領候補に指名され、演説する「フランスのための運動」(MPE)のフィリップ・ドビリエ党首(当時)=2006年12月9日(UPI)

 フランス次期大統領選(2027年)をにらみ、右派の結集を呼び掛ける動きが支持を伸ばしている。その中心にいるのが右派政党「フランスのための運動」(MPF)の元党首、フィリップ・ドビリエ元欧州議会議員(76)だ。自身は、次期大統領選出馬を表明していないが、右派勢力に最も影響力を持つ人物として注目を集めている。(パリ安倍雅信)

 ドビリエ氏は西部バンデ出身の貴族の家系に生まれた。熱心なカトリック教徒で、弟のピエール・ドビリエ氏は元仏軍統合参謀総長。バンデは1789年のフランス革命で最後まで革命軍に抵抗した地域として知られる。

 しばらく政界を離れていたフィリップ・ドビリエ氏が再び表舞台に出てきたのは約10年前。主権国家主義を強く主張する姿勢が大きな支持を集め、人気が再燃した。過去に大統領選で2度の失敗(1995年は得票率4・74%、2007年は2・23%)を経験したが、今はフランス右旋回の重鎮的存在だ。

 1年前に出版された著書『メモリシド』は23万部以上売れた。今年10月に出版された『ポピュリサイド』は大きな論争を巻き起こしている。さらに保守系ネットチャンネル、CNEWSに毎週金曜日に出演し、約80万人が視聴する。毎週土曜日には、ラジオ局ヨーロッパ1にも出演する。

 同氏は、フランスは左翼リベラリズムとイスラム移民によって存続の危機にあり、国境を閉鎖し、主権を取り戻す必要があると極右寄りの主張を繰り返している。22年の大統領選では、極右・再征服を立ち上げたエリック・ゼムール候補を支持した。

 ドビリエ氏が急速に影響力を拡大した背景には、保守で熱心なカトリック教徒のメディア王、バンサン・ボロレ氏の存在が大きい。近年、メディアに巨額の投資を行うボロレ氏は、CNEWSやヨーロッパ1を含む多数のテレビや新聞社を所有し、特に右派・国民連合(RN)のマリーヌ・ルペン氏、ゼムール氏、さらには中道右派の共和党を支持している。

 今年9月には、週刊紙ジュルナル・デュ・ディマンシュのスタッフが組織した、移民反対の国民投票を求めるドビリエ氏の嘆願書に200万人近くの署名が集まった。政治アナリストのアレクサンドル・ペセイ氏は、日刊紙ルモンドで「特に若者の間で、彼の周囲に何かが生まれつつある」と指摘する。

 ドビリエ氏を著名人にしたのは、バンデで毎年行われる大スペクタクル劇「ピュイ・デュ・フー」や中世の町の再現で知られるテーマパークだ。

 この劇は、フランス革命当時を舞台に、村や王国、君主制、カトリックを革命軍から守るために抵抗した農民を含む王党派の受難に満ちた同地の歴史を描いたもので、約4000人の出演者は地元ボランティア俳優が演じている。賛否両論がありながら続けられ、保守勢力による文化的な戦いに大いに貢献している。

 ドビリエ氏は、フランスの国家主権・国民主権を中心に据えることで、グローバル化・超国家構造(特に欧州連合=EU)・自由貿易・移民・文化変容に対して強い懸念を表明し、支持者を増やしている。欧州統合・欧州超国家構造については「国家の解体」「真の主権放棄」につながると懸念し、国民の意思が反映されないシステムを正す必要があると主張している。

 経済や社会政策でも、グローバルな分業・自由貿易万能主義が、フランスの国境・主権を弱体化させたと懸念している。ただ、同氏の主権国家論は閉鎖的、排他的国家観と結び付くリスクが指摘され、特に移民・多文化主義・人権と主権の衝突を生んでいるとの批判もある。

 移民問題が深刻化し、再びテロの脅威が高まるフランスで、右派勢力には追い風が吹いている。次期大統領選に意欲を示すルペン氏、ゼムール氏、中道右派の共和党候補者らの後ろにはドビリエ氏という力強いイデオローグが存在している。

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