
「国際エクソシスト協会」(AIE)年次総会が9月15日から20日まで、イタリアのローマ近郊のサクロファーノで開催された。ピエトロ・パロリン枢機卿をはじめ、数人の枢機卿と司教を含む約300人の聖職者らが参加。ローマ教皇レオ14世もオンラインで総会に臨み、エクソシストの業を評価した。(ウィーン小川 敏)
イタリアのANSA通信によると、レオ14世はあいさつで「悪に取り憑(つ)かれた者は、祈りとキリストへの呼び掛けを通して支えられなければならない。神は悪魔払いの秘跡を通して悪魔に打ち勝つことができる」と述べ、エクソシスト(悪魔払い師)の聖業を評価した。
エクソシストは、1973年に制作され、脚本賞を含む2部門のアカデミー賞を受賞した米国のホラー映画「エクソシスト」によって世界に知られるようになった。
約30カ国に会員を持つAIEは2014年、バチカンから正式に認可された。AIEの創設者ガブリエーレ・アモルト神父は2016年に亡くなった。同神父は生前、「1986年から2010年まで7万回以上の悪魔払いを行った」という。
カトリック教徒が多数派を占める国では、悪魔払い(エクソシズム)が依然行われている。教会はエクソシズムを「人々を悪の力から解放するよう神に祈る行為であり、特別な祝福の儀式」と受け取っている。エクソシズムには、聖水の散布や按手(あんしゅ)も含まれる。AIEではまた、エクソシストの養成も行っている。
前教皇フランシスコは、「悪魔」や「悪霊」と戦う必要を繰り返し述べてきたが、エクソシズムに批判的な聖職者もいる。「悪魔払いを願う人は実際は医学的および心理的な支援を必要としている」と主張し、エクソシズムに懐疑的な立場を取る。例えば、旧約聖書研究者ヘルベルト・ハーク教授は、「サタンの存在は証明も否定もされていない。その存在は科学的認識外にある」と述べ、エクソシズムに対しても慎重な姿勢を取っている。
聖書で悪魔は約300回、言及されている。有名な箇所を拾ってみると、「悪魔はすでにシモンの子イスカリオテのユダの心に、イエスを裏切ろうとする思いを入れていた」(ヨハネによる福音書13章2節)や、十字架に行く決意をしたイエスを説得するペテロに対し、イエスは「サタンよ、引きさがれ」(マルコによる福音書8章33節)と激怒している。聖書の世界では悪魔は生き生きと描かれている。
バチカン法王庁は1999年、1614年のエクソシズムの儀式を修正し、新エクソシズム儀式を公表した。それによると、①医学や心理学の知識を除外してはならない②信者が霊に憑かれているのか、通常の病気かを慎重にチェックする③秘密を厳守する④教区司教の許可を得る――など、エクソシズムの条件が列記されている。
バチカンが新エクソシズムを公表した背景には、「霊の憑依」に苦しむ信者が増加する一方、霊の憑依現象と精神病との区別が難しくなり、一部で混乱が生じてきたからだ。
元教皇ヨハネ・パウロ2世は悪魔について、「悪魔は擬人化した悪」と規定し、「悪魔の影響は今日でも見られるが、キリスト者は悪魔を恐れる必要はない。しかし、悪魔から完全に解放されるためには、時(最後の審判)の到来を待たなければならない」と述べている。
新約聖書の預言書「ヨハネの黙示録」によると、「終わりの日に、霊界の戸が開き、無数の霊人がこの地上界に降りてくる」という。
エクソシストの一人、グリッファ神父は「悪魔は存在し、その様相は多種多様に及ぶ。その活動はここにきて激しさを増し、悪魔の憑依現象が広がっている」と証言している。





