トップ国際欧州治安が地方選争点に 麻薬絡みの暴力増え右派に追い風 フランス

治安が地方選争点に 麻薬絡みの暴力増え右派に追い風 フランス

フランスの右派政党・国民連合(RN)のルペン下院議員=4月6日、パリ(AFP時事)
フランスの右派政党・国民連合(RN)のルペン下院議員=4月6日、パリ(AFP時事)

右派政党に追い風

来春予定される地方議会選挙の最大の関心事は治安問題と言われる。住宅地での暴力が増加し、国民生活が危険にさらされ、その原因の一つは移民が関与する麻薬取引問題とされている。この新たな課題は右派政党には追い風となっているようだ。(パリ安倍雅信)

フランスでは9月の新年度を控え、来年3月に実施予定の地方議会選挙のテーマとして4割以上が「安全」を挙げトップになった。フランス市長協会(AMF)の委託を受けた世論調査会社イプソス研究所が6月16日から23日にかけて6034人を対象に実施した調査では、2020年の市議会選挙前の調査(34%)と比べて43%に上昇した。

仏政治生活研究センター研究員のマルティアル・フーコー氏は、「ますます緊張が高まる」社会全体において、調査対象となったフランス人の10人中9人(87%)が国内で暴力が増加していると感じていると指摘した。さらに居住地で暴力が増加していると考える人は47%で社会全体よりは少ないが、治安への懸念は確実に高まっている。

今年7月14日の週だけで、オワーズ県のリモージュ、コンピエーニュ、エロー県のシャルルビルメジエール、ニーム、ベジェで暴動が相次いだ。内務省によると、これらの事件の多くは麻薬取引に関連している。

例えば7月18日から19日にかけての夜、リモージュで警察官と覆面集団との間で激しい衝突が発生した。地元市長は「まるで猛獣のように暴れた」と証言した。シャルルビルメジエール市では7月13日から14日にかけての夜間に車が放火され、バス停などの公道設備が破壊された。

同市長は麻薬取引の拠点で発生した衝突だったと述べた。

多くの麻薬取引に関与する人身売買犯罪組織間で衝突が起き、町の住民を震え上がらせている。過去には麻薬取引が最も活発な仏南部マルセイユなどでの犯罪グループ同士の殺傷事件が一般的だったが、同地区への取り締まりが強化され、麻薬ディーラーが全国に拡散する中、衝突は規模の小さな自治体に広がっている。

イプソスのブリス・タンチュリエ副所長は「フランス人は愚かではない。市長が万能ではないこと、暴動が起きた場合は他の要因も影響することも考えられる」と指摘する。さらにこれらの地方都市の暴力化は、「左派よりは中道派の共和党(LR)や右派の国民連合(RN)に有利に働くのは確実だ」と分析する。

麻薬ディーラー同士の暴力事件は、一般市民をも巻き込んでいる。白昼堂々、銃が乱射され、流れ弾が一般市民に当たる事件も発生している。RNを率いるルペン下院議員や極右のゼムール氏はいずれも次期大統領候補だが、多額の予算が治安のために投じられているにもかかわらず、成果を出していないと政府や地方首長を批判する。

来春の地方議会選挙を念頭にRNは「住民が恐怖の中で暮らしていること、そしてその修復費用が税金で賄われることを、私たちは快く思っていない」と述べている。

前回は環境問題が選挙テーマだったことから、左派に有利に働いたが、次回は右派に有利な暴力問題がメインテーマとして浮上している。

小中規模都市での暴力への対応として、エロー県ベジェ、イブリーヌ県トリエルシュルセーヌ、セーヌサンドニ県サントゥアンなど、多くの地方自治体は未成年者に対する夜間外出禁止令の導入を決定した。

ただ、未成年者の外出禁止令が効果を上げていないという指摘もある。24年3月から外出禁止令が施行されているベジェでは、今年7月19日土曜日の夜から日曜日にかけて、消防士と警察官を狙った待ち伏せ攻撃により警察官1人が負傷し、迫撃砲がアパートに直撃して火災が発生した。フランスでは新たな地方都市の暴力化が政治問題化している。

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