
スイス・ジュネーブでの国連人権理事会の会合に合わせて、日本での世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)の解散命令請求などを巡るセッション「60万人の信徒を持つ宗教団体の撲滅と解散-日本の統一教会」が16日、開催された。強制改宗の被害者、弁護士らが登壇し、請求の不当性を訴えた。(信教の自由取材班)
家庭連合信徒で医師の小出浩久氏は1990年代前半に自身が両親、親戚らに監禁されるなど、2年にわたって信仰を捨てるよう迫られたディプログラミングの体験を生々しく語った。また、監禁から逃れるためには、家庭連合を相手取り訴訟を起こしたり、信徒の監禁を他の信徒らに勧めたりするよう迫られた時の自身について「生ける屍(しかばね)のようだった」と当時の心境を語った。
日本での家庭連合の解散命令請求の不当性を訴えてきた国際人権弁護士のパトリシア・デュバル氏によると、強制改宗を受けた信徒らは、家庭連合を離れた後も、「数年後、場合によっては20年たっても再び監禁されるのではないか」という恐怖に駆られ、教会から離れていかざるを得なくなっていると指摘した。
デュバル氏はセッションで、小出氏の体験について「本当に信仰を捨てたかどうかを確かめるためのリハビリ期間がある」と指摘、棄教を装うことが困難なシステムがつくられている実態を明らかにした。
また、イタリアの宗教社会学者マッシモ・イントロヴィニエ氏は、解散命令について「単に免税の地位を失うだけという嘘(うそ)を国際メディアが流している」と批判。「銀行口座、礼拝所などすべての資産」が奪われ「(宗教団体として)機能しなくなり」「それは殺人に等しい」とその不当性を訴えた。
さらに、反家庭連合の弁護士グループ、全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)についても、何十年にもわたって家庭連合の解散をもくろみ失敗してきたが、弁連側は安倍晋三元首相の暗殺を「絶好のチャンス」と捉えたと指摘した。
一方デュバル氏は、学校で子供への「ディプログラミングとリエデュケーション(再教育)」が行われていると強い懸念を示した。同氏によると、「統一教会の親の信仰について信徒の子供が相談に来ると、学校のカウンセラーは生徒を再教育するために統一教会の元信徒を紹介する」と指摘、人権などの啓発の授業の中で「数多くの悪いことが教えられている」と訴えた。さらに学校で生徒らに「統一教会についての情報や支援を求めるための連絡先」が記された短い手紙が配られているという。その上で、カウンセラーから相談を受けた弁護士は、「親から子供を引き離すこと、シェルターに子供を入れ教育することなどをカウンセラーにアドバイスする」と言う。
デュバル氏は、「子供は宗教や教育を自ら選択することはできない。子供なのだから当然のことだ。…親は彼ら自身の信仰に合わせて子供を教育する権利を持つが、それが日本では侵害されている」と強い懸念を表明した。
また、家庭連合法務局の近藤徳茂副局長は、解散命令の根拠となる教団の不法行為について、原告の大部分がディプログラミングの被害者であること、訴えの根拠となる事例が20~40年前と古いことなどを指摘。ディプログラミングの被害が増えた時期と家庭連合への訴えが増えた時期が一致するとして、「過去の裁判は意図的に作り出されたもの」であり「解散命令はあらゆる面からみて不当」と訴えた。