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レオ14世は前教皇のクローンではない

教皇選出後最初のミサを挙行するレオ14世=9日
教皇選出後最初のミサを挙行するレオ14世=9日(バチカンニュースから)

米国初のローマ教皇レオ14世の人物像について、メディアでは様々な情報が報じられている。ロバート・フランシス・プレボスト枢機卿の2人の実兄が弟の教皇選出を祝うためにバチカンを訪問したが、彼らによると、プレボスト枢機卿は少年時代から将来、聖職者になることを夢見ていたという。その点、ブエノスアイレス大学で化学を学んだ前教皇アルゼンチン出身のフランシスコ教皇(ホルへ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿)とは違う。

レオ14世はフランシスコ教皇と同様、修道会出身(前者はアウグスチノ会、後者はイエズス会)だ。前者は20年以上ぺルーの宣教師として歩み、後者はブエノスアイレスの大司教だった。両教皇は南米教会と深く関係を有してきたことから、レオ14世はフランシスコ教皇の後継者と受け取る向きがある。一部ではレオ14世はフランシスコ教皇のクローンだ、といった論評も聞かれるほどだ。

まず、両教皇の選出された時の年齢を見てみよう。フランシスコ教皇がペテロの後継者のローマ教皇に選出された時は76歳だった。一方、プレボスト枢機卿が今月8日、システィーナ礼拝堂で開催されたコンクラーベで第267代教皇に選ばれた時は69歳だ。両者の選出時の年齢の差は大きい。プレボスト枢機卿が名乗るレオ14世時代が長期政権となる可能性が考えられるのだ。

ちなみに、27年の長期任期だったヨハネ・パウロ2世の後継者に選ばれたべネディクト16世は78歳の時、ローマ教皇となった。その任期は8年間だった。フランシスコ教皇の場合、76歳の時に選ばれ、12年間教皇を務めた。レオ14世が尊敬するレオ13世の任期は25年間だった。

レオ14世はフランシスコ教皇によって枢機卿に任命された108人の枢機卿の一人だ。そのため、フランシスコ教皇が推進してきた教会刷新路線をレオ14世は継承していくだろう、と当然考えられるわけだ。実際、プレボスト枢機卿はレオ14世としてサン・ピエトロ大聖堂のバルコーンに出て新教皇の誕生を待っていた多くの信者の前に姿を見せ、ショートスピーチをしたが、その中で「フランシスコ教皇に感謝を捧げたい」と述べ、前教皇が推進していったシノドス路線を継続していく意向を示唆している。

ところで、南米教会出身のローマ教皇フランシスコが就任直後、貧者の救済を頻繁に言及するため、「教皇は南米の神学といわれる解放神学の信奉者ではないか」という声が聞かれた。バチカンは1980年代に入り、南米教会で広がっていった解放神学に警戒心を高めていた。解放神学がマルクス主義に接近していく傾向が見え出したからだ。バチカン教理省長官に就任したヨーゼフ・ラッツィンガー枢機卿(後日、ベネディクト16世)は南米の解放神学者グスタボ・グティエレス氏やレオナルド・ボブ氏の著作を批判、1984年には教理省の名で解放神学に警告を発したことがあった。 

プレボイス枢機卿は2023年にフランシスコ教皇からバチカンに呼ばれ、司教省長官に任命される前23年余り南米ペルーの宣教師として歩んできたこともあって、貧困に悩む南米の人々の実情に精通している。フランシスコ教皇はプレボイス枢機卿のキャリアを高く評価していたといわれた。

確かに、レオ14世の社会問題への傾倒度ではフランシスコ教皇に似ている。また、プレボイス枢機卿が教皇名にレオ14世と名乗ることを希望したということは、同枢機卿がレオ13世(在位1878~1903年)の足跡を評価し、その後継者になりたいと考えていることを示している。レオ13世は1891年、カトリック社会教説の回勅「レールム・ノヴァールム」を発表し、その中で労働者の権利を擁護し、搾取と行き過ぎた資本主義に警告している。

ただ、新旧両教皇を知るオーストリアのシエーンボルン枢機卿はメディアとのインタビューの中で「新教皇はフランシスコ教皇に似ているが、その言動は実務的で、相手の考えに先ず耳を傾ける。カリスマ性がある」と説明している。

レオ14世はサン・ピエトロ大聖堂のバルコニーから信者たちの前に初めて姿を見せた時、教皇の肩掛けとストールを着用していた。一方、フランシスコ教皇は最初から教皇の肩掛けなど華やかな法衣の着用を拒んだ。フランシスコ教皇は教皇宮殿に住むことを拒み、ゲストハウス・サンタ・マルタの自身の部屋(201号室)で寝泊まりしてきた。

バチカン・ウオッチャーは「レオ14世はフランシスコ教皇に似ているが、生活スタイルは違う。レオ14世は教皇用の華やかな法衣の着用を拒むことはないだろう」という。

新教皇レオ14世は9日、システィーナ礼拝堂で、自らを教皇に選出した枢機卿らとともに、教皇就任後最初のミサを執り行った。同14世は最初は英語で説教し、「困難な環境でも信仰を証し、宣教を進めていくべきだ」と呼び掛けている。そして「信仰の欠如はしばしば劇的な副作用をもたらす。人生の意味は失われ、慈悲は忘れ去られ、人間の尊厳は最も劇的な形で侵害され、家族は危機に陥り、その他私たちの社会が少なからず受けている多くの傷が残る」と語った。

レオ14世はフランシスコ教皇のクローンではない。同14世のプロフィールは時間の経過と共に新たに付け加えられていくだろう。

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