【ウィーン小川敏】フランシスコ教皇の逝去を受け、来月初めには次期ローマ教皇を選出するコンクラーベが挙行される。選挙権を有する、80歳未満の１３５人の枢機卿が参加する。教皇選出にはうち３分の２、すなわち90人の支持が必要だ。メディアで有力候補が報じられているが、コンクラーベではサプライズが付き物でもある。ここでは１３５人の枢機卿の出身地域を見てみたい。
１３５人の内訳は、欧州出身が53人で最大勢力を誇る。次いでアジアが23人、アフリカ18人、南米17人、北米16人、そして中米とオセアニアが４人ずつの順序となる。
カトリック教会では最高指導者のローマ教皇を、イタリア教会から選出するのが歴代、一部の例外を除いて常だった。従って冷戦時代、東欧のポーランドからヨハネ・パウロ２世が選出されたのは異例だった。また、21日に亡くなったフランシスコ教皇が南米（アルゼンチン）出身であったのも初めてであり、選出当時、世界のカトリック教会は驚きに包まれた。
さて、選挙権を有する枢機卿の勢力図からは依然、次期教皇を欧州からと見られがちだが、その可能性は高くない。
理由としては、まず前教皇のベネディクト16世がドイツ教会出身であり、次期は欧州以外からとの声が強い。また欧州ではここ数年、聖職者による未成年者への性的虐待事件が多発しており、教会への信頼性が大きく揺らぎ、信者らの教会離れが加速しているからだ。
欧州教会の衰退は前回のコンクラーベの時と比べても明らか。前回２０１３年、欧州出身の枢機卿は60人で、選挙権を有する全枢機卿１１５人の過半数を占めていた。ところが今回は53人で、過半数の90人に程遠いのだ。過半数割れ自体が初めてで、衰退は一目瞭然である。
そこで今回は、信者数が増え、枢機卿の数でも欧州に次ぐアジアから次期教皇が誕生するのではないか。
コンクラーベが開催されるのはシスティーナ礼拝堂。参加する枢機卿は投票前に秘密保持を宣誓する。誰が何票集めたかなど、情報の外部流出による事後のさまざまな影響を未然に防ぐためだ。
コンクラーベ開催中、妨害電波が流れることがある。バチカンの治安担当官は「盗聴防止はやむ得ない処置。だが１００％阻止は不可能。システィーナのような歴史的建物では内部の音波が外部に漏れやすい」という。
情報を外部漏洩（ろうえい）した枢機卿や関係者は最悪の場合、破門される。それだけバチカンは秘密保持に神経を使う。「コンクラーベには神が働く」と言われており、盗聴により、神が働く前に人の悪知恵が先行するケースは避けなければなるまい。
「人は考え，神が決める」との格言がある。コンクラーベでもそうあってほしいものだ。
