
【パリ安倍雅信】イタリアのメローニ首相がホワイトハウスで17日、トランプ米大統領と会談して以来、EUによる対米関税交渉はタカ派とハト派に分かれている。ハト派の代表格、メローニ氏は米国が要求する貿易不均衡の是正、防衛費の負担増に応えながら、トランプ氏による追加関税の緩和を目指している。一方、タカ派の代表、フランスのマクロン大統領は対米投資を控えるよう財界に要請している。
トランプ氏は相互関税の上乗せ分を90日間休止すると発表したが、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員会委員長は、あくまで報復関税で応じるとしている。EUで対米最大輸出国であるドイツのメルツ次期首相も、「欧州は自らを守る決意であり、団結こそ有用」と述べ、フランスに同調している。メルツ氏は「明確かつ断固として、また慎重に行動することが重要」と述べ、欧州の団結を通じて、実は「強気のアメリカが、弱い立場にある」との認識も示した。
スペインもタカ派で、サンチェス首相は対話と多国間協力を主張する一方、対米貿易上の脅威に対する欧州の団結を呼び掛け、相応の対抗措置を支持している。
対米貿易戦争へのエスカレートを懸念するメローニ氏は、「貿易戦争は誰の利益にもならない、米国にとっても同様」と述べ、対立激化なく「前向きな解決策を見つける」ため、トランプ氏との対話に取り組むつもりだと述べる。メローニ氏は先のホワイトハウス訪問でトランプ氏から、EU首脳らとの協議をローマで行う合意を取り付けたばかりだ。
アイルランドも大西洋の両側で、良好な貿易関係を維持すべきだと一貫して主張、EUによる報復には断固反対している。同国は10%の相互関税によりGDPを2.5%減少させる可能性があると予測しているが、対米輸出の半分以上を占める医薬品は現在、米国による関税の適用除外となっている。
異色のハンガリーはドイツの自動車産業への依存度が高いにもかかわらず、米国の関税に報復する意思を示していない。トランプ支持者のオルバン首相は「ハンガリーと米国の経済協力パッケージが、ハンガリー経済に大きな支援となる」と述べている。
90日間の交渉過程でトランプ氏は、自身への理解を示す国にはそれなりの譲歩、逆に報復で対立を深めるタカ派には異なった対応を取る可能性も指摘されている。