
【ウィーン小川敏】ローマ・カトリック教会最高指導者フランシスコ教皇が21日、死去した。88歳だった。初の中南米出身、初のイエズス会出のローマ教皇で、3月で在位12年を迎えていた。教皇の死去を受け、バチカン教皇庁は次期教皇を選出すためにコンクラーベを招集する。
フランシスコ教皇は、キリスト教会最大の祝日の復活祭(イースター)の20日、車椅子でサンピエトロ大聖堂のバルコニーに姿を見せ、広場に集った約3万5000人の信者たちから暖かい拍手で迎えられた。教皇は「復活祭おめでとう」と皆にあいさつ。その後、オープンカーに乗ってサンピエトロ広場を通り、信者たちの歓声に応えた。教皇は20日早朝、ローマ訪問中のバンス米副大統領と会見するなど、最後まで教皇としての職務を全うした。
教皇は2月14日、気管支炎の疑いでローマのジェメッリ総合病院に入院した。当初は気管支炎といわれたが、その後、両肺に炎症が広がっていることが分かった。容体が悪化し、一時期、持続性喘息性呼吸危機の症状となり、酸素呼吸が行われた。血液検査で血小板減少症と診断され、輸血が必要となったほどだ。3月23日に退院したが、2カ月余りの療養が必要といわれていた。
教皇は前任者のベネディクト16世とは異なり、信者やメディアに積極的に接触してきた。過去12年間、聖職者の未成年者への性的虐待問題が世界の教会に影響を与え、脱会する信者が増加する一方、聖職者不足が深刻となった。聖職者から性的虐待を受けた犠牲者への賠償金の支払いで破産する教会も出ていた。
そのような中、教皇は教会の刷新には積極的な発言を繰り返してきた。
バチカンで昨年10月、教会の刷新、改革について話し合う世界代表司教会議(シノドス)第16回通常総会が開催されたが、教皇はシノドス開会前のサンピエトロ広場でのミサの中で、「私たちの集まりは議会ではなく、共同体だ。シノドスは多様性の中で調和を生み出すことが目的である。シノドスは、同じ信仰に満たされ、聖性への同じ願いに駆り立てられている兄弟姉妹たちのためであり、私たちは彼らと共に、また彼らのために、主が導こうとしている道を理解することに努めている。参加者は忍耐強く他者の意見に耳を傾けてほしい」と語り、シノドスを通じた教会の精神的刷新に期待をにじませていた。