聖職者襲撃で少年逮捕
【パリ安倍雅信】フランス中部オルレアンの路上で22日、ユダヤ教聖職者ラビが襲撃され、未成年の容疑者が逮捕された。事件は土曜日の午後1時半ごろ、オルレアンのユダヤ教礼拝堂シナゴーグのユダヤ教聖職者のラビ、アリエ・エンゲルベルグ氏が市内の路上で若い男に襲われ、頭を殴られ、肩を噛(か)まれている様子が防犯カメラに撮影され、侮辱される姿を映していた。その後、16歳の少年が逮捕された。
容疑者の男は当局によって身元確認中だが、諜報(ちょうほう)機関の監視リストにはない人物だ。男に声を掛けられたラビの説明では、ユダヤ人かどうか聞かれたが、答えなかったという。男はラビに唾を吐きかけ「ユダヤ人はみんなクズだ」と叫んだ後、彼を身体的に攻撃したという。この事件の状況は、防犯カメラでも立証された。当局は明らかな反ユダヤ主義を動機とした暴力事件として捜査を続けている。
マクロン大統領は「オルレアンでのアリエ・エンゲルベルグ氏への襲撃はわれわれ全員に衝撃を与えている」と自身のXアカウントに投稿し、反ユダヤ主義を「毒」と非難した。「私は彼と彼の息子、そしてユダヤ教を信仰するすべての同胞に、私と国家の全面的な支援を差し伸べる」と大統領は書いた。
オルレアンのユダヤ人コミュニティーの代表アンドレ・ドルオン氏は、ガザのハマスによってイスラエルが大規模攻撃された2023年10月7日以来、ユダヤ教徒であるオルレアンの人々は概(おおむ)ね「言葉や身体的な攻撃、反ユダヤ主義の脅迫状などを受けることなく」暮らしてきたという。同市ユダヤ人コミュニティーは、フランスの主要都市と比較して大きくはないが、存在感があると見なされてきた。
フランスのユダヤ人機関代表評議会(CRIF)は1月22日、24年のフランスにおける反ユダヤ主義に関する統計を発表した。23年と同様に、記録された行為の数は過去最高の1570件となった。22年は436件だった。