トップ国際欧州4年目のウクライナ侵攻、欧州防衛体制を再構築へ 難民増に懸念も

4年目のウクライナ侵攻、欧州防衛体制を再構築へ 難民増に懸念も

首脳会合の写真撮影に臨む(前列左から)マクロン仏大統領、スターマー英首相、ゼレンスキー・ウクライナ大統領ら=2日、ロンドン(EPA時事)
トランプ米大統領がウクライナ支援の一時停止を決め、北大西洋条約機構(NATO)からの撤退をちらつかせる中、欧州連合(EU)の政治家たちは、米国なしも視野に入れた欧州防衛体制の再構築を急いでいる。さらに3年前に押し寄せたウクライナ難民が再びEUに流入する可能性も高まり、懸念が広がっている。経済難で苦しむ欧州諸国は難民受け入れに積極的とは言えない。(パリ安倍雅信)

米ホワイトハウスでトランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領がメディアの前で激しく衝突した直後、欧州はゼレンスキー氏を迎え、ロンドンやブリュッセルで「ウクライナを全面支援する」姿勢を確認する首脳会議を開催した。トランプ氏がプーチン露大統領側に付くような発言を繰り返す一方、ウクライナに国境を接するEUは、ロシアのEU領土への攻撃拡大を警戒し、ロシア脅威論を展開している。

現状、決してEU加盟国も一枚岩とは言えないが、この数週間で世論は大きな変化を見せている。理由はトランプ氏のゼレンスキー氏への批判的強硬姿勢を示したのを見て、欧州諸国は明らかにトランプ氏が、たとえウクライナの安全を保証しなくても、昨年の大統領選の公約通り、自分の手でウクライナ紛争を終わらせようと急いでいることを見て取ったからだ。米国が欧州側に立って欧州を守り抜く確信は揺らいでいる。

この動揺の中で、ゼレンスキー氏がウクライナの鉱物資源を米国に無条件に手渡す圧力を避けられない場合、安全の保証のない停戦合意が欧州の安全を脅かす可能性を否定できない。欧州ではロシアの再侵攻が欧州にも拡大するリスクに備え、独自にウクライナへの平和維持軍を派遣する案が現実味を帯びている。たとえEU全27カ国が合意しないにしても、有志国がウクライナに派兵する可能性は高まっている。

そうなれば、欧州の平和部隊はロシア軍と直接戦闘を交える可能性も出てくる。戦後の連合軍による封じ込め政策以来、軍備増強を控えてきたドイツも、国防費の増強のみならず、メルツ次期首相候補は積極的にフランスの核の傘に入る方針まで見せている。EUは6日、ウクライナへの侵攻を続けるロシアの脅威に対抗するため、8000億ユーロ(約128兆円)規模の「再軍備計画」で合意した。

一方、ロシアは7日、EUの防衛強化計画について、EUの「経済同盟から軍事同盟への転換」計画は、「ウクライナ戦争終結に向けた合意締結の可能性に悪影響を及ぼす可能性がある」との考えをペスコフ露大統領報道官は述べた。ロシアは米国が一時的にウクライナへの軍事支援を停止する中、ウクライナ領土への爆撃を強化し、トランプ氏はロシアへの経済制裁強化を口にしている。

一夜で15人が死亡したロシアによるウクライナへの爆撃を受け、EUのカラス外交安全保障上級代表(外相)は8日、プーチン露大統領は「平和に興味がない」と述べた。カラス氏はⅩ(旧ツイッター)で「われわれは軍事支援を強化しなければならない。さもなければ、さらに多くのウクライナの民間人が大きな犠牲を払うことになる」と投稿した。同氏の軍事援助提案計画はEU内で改正・検討中だ。

欧州の一連の防衛強化の動きは、プーチン氏からすれば、米露の直接交渉の妨げになっているようにも見える。欧州やウクライナの頭越しに米露で進めたい紛争終結に支障を来しているとの見方もある。

一方、3年前のロシアのウクライナ侵攻以来、昨年12月時点で約430万人以上のウクライナ人が欧州諸国で一時的保護を受けてきた。ドイツのフェザー内相は6日、「仮に米国の支援がない状態で、プーチン大統領がこの戦争をさらにエスカレートさせれば、難民の大規模な移動につながる。その場合、公正な仕組みに従って、EU全体にウクライナ難民を拘束力のある形で分けて引き受ける必要がある」と述べた。

現時点でドイツ、ポーランド、チェコがウクライナ難民を最も多く受け入れている。ただ、今後、新たな、より大きな難民の波が押し寄せた場合、「状況は変わらざるを得ないだろう」とフェザー氏は語った。オーストリアのカーナー内相は、「オーストリアは国民一人当たりで明らかに他の多くの国よりも多くの難民を受け入れている」と、ウクライナ難民への警戒感を強めている。

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