トップ国際欧州ネットでイスラム過激思想に感化 治安当局は対応に苦慮 オーストリア

ネットでイスラム過激思想に感化 治安当局は対応に苦慮 オーストリア

オーストリアのカルナー内相(AFP時事)
オーストリア南部ケルンテン州のフィラッハで15日、23歳のシリア人の男がナイフで通行人を襲撃し、14歳の少年を殺害、5人に重軽傷を負わせる事件が起きた。捜査が進むうちに、容疑者がインターネットを通じて短期間でイスラム過激派思想に染まっていったことが明らかになり、治安当局は対応に頭を痛めている。(ウィーン小川 敏)

カルナー内相は16日、犯行現場で記者会見を開き、「容疑者は過激派組織『イスラム国』(IS)シンパで、犯行は宗教的動機に基づくテロだ」と説明した。家宅捜索された容疑者の家にはISの旗があったという。犯行は単独とみられている。

容疑者は治安当局が全くマークしていない、普通のシリア出身の青年だったが、ネットを通じて短期間でイスラム過激派思想に感化され、テロ行為を行ったという。オーストリアの捜査当局は「短編動画投稿アプリTikTok(ティックトック)などのソーシャルネットワークを通じて数週間、数カ月で普通のイスラム教の若者が過激化することには驚かざるを得ない」と述べている。

実際、容疑者はTikTokを通じて短期間で過激化していた。容疑者の携帯電話にはISのプロパガンダ資料が残っていた。ISに忠誠を宣言するビデオが録音され、端末に保存されていたが、まだ送信はしていなかった。「犯行3日前にナイフを購入し、襲撃を決意したようだ」という。

TikTokはアルゴリズムが非常に強化されている。TikTokにはISのプログラムがあり、目立たない動画からISのプロパガンダに迅速に移行でき、過激なコンテンツが飛び出してくる。多くのインフルエンサーが登場し、イスラム教の教えを感情的にアピールする。

英キングス・カレッジ・ロンドンで教鞭(きょうべん)を執るテロ専門家ペーター・ノイマン教授はオーストリア国営放送とのインタビューで、「ハマスのイスラエルへの奇襲テロ事件以後、ネットを通じて急速に過激化する若者が増えてきた」と述べている。10年前、イスラム教の若者が刑務所で過激派のイスラム教徒と出会い、過激主義の道を歩みだしたり、モスク(イスラム礼拝所)で欧米社会への憎悪を説教する伝道師から影響を受けるといったケースが多かった。同教授は「オンラインでの過激化は、比較的短期間に残忍な行為につながる可能性がある」と指摘し、治安関係者に警戒を呼び掛けている。

ガザでの紛争により、多くの人がイスラム過激派に興味を持ち始めており、テロリストや過激派がこの話題を悪用している。インフルエンサーは、特に若者を感情的にし、道具化し、最終的に「フィルターバブル現象」と呼ばれる世界に陥らせる。

ネットの検索サイトが提供するアルゴリズムは各ユーザーが見たくないような情報を遮断するため、自分が見たい情報しか見なくなり、いつの間にか同じ意見を持つ人間同士で群れ集まるようになっていく。

IT専門家によると、「最近の若者がプラットフォームをノンストップで利用しているのを見れば、フィルターバブル現象がどれほど起きやすいか容易に想像できる」と言う。

治安当局は、オンラインで過激なコンテンツを発信するインフルエンサーを追放し、SNSの閉鎖などを検討する一方、カルナー内相はシリア人やアフガニスタン人の亡命希望者の一斉検査、メッセンジャー監視などを考えているが、個人情報の保護、人権擁護といったハードルがあるため、実行には多くの議論が出てくることが必至だ。

13日には独南部バイエルン州のミュンヘンで、デモ行進中の人々に車で突っ込み、2人を殺害、30人余りを重軽傷させるテロ事件が起きたばかりだ。オーストリア国民はフィラッハのテロ事件に衝撃を受けている。同時に、不法難民に対する強硬対策を求める声が再び高まってきた。

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