
【パリ安倍雅信】仏パリで17日、ウクライナ支援のための非公式の欧州首脳会合が開催されたが、欧州からの平和維持軍派遣について首脳間で意見に隔たりがあり、具体案がないまま終了した。
先週、独ミュンヘンで開催された安全保障会議を受け、トランプ米大統領とプーチン露大統領によるウクライナ和平への直接交渉が迫る中、欧州首脳はウクライナの安全確保を巡りマクロン仏大統領の呼び掛けで、平和維持軍派遣について話し合った。
トランプ氏による和平案に対して、ウクライナのゼレンスキー大統領は、同国民の安全確保を最優先とするよう主張している。首脳会合では、ロシア侵攻に直面するウクライナへの共同支援継続を確認したが、米露が交渉を開始する中、変化を伴う可能性のある、新たな安全保障の枠組みを提供するには至らなかった。
トランプ氏はプーチン氏との電話会談で双方が和平を望んでいることを確認、3年にわたった戦争を数週間以内に終結させる合意への意向を表明した。長期紛争で疲弊する欧州も、ウクライナの合意があるならば、ウクライナの痛みを伴う譲歩だとしても、これ以上の死者を出さない選択だとして優先させ得るもの。
今回の非公式会合直前、マクロン氏はトランプ氏と電話会談を行った。一部領土をウクライナが失っても和平を優先する場合、ゼレンスキー氏が強く要求している同国国民の安全担保に、欧州からの平和維持軍派遣は必須とみられる。英国のスターマー首相も17日、米国の「バックストップ」を条件に、同国軍派遣の用意があることを明らかにした。
しかし、連邦議会選挙を控えたドイツのショルツ首相は「議論するのは時期尚早」と派遣案に終始、批判的だった。スペインのサンチェス首相は「このモデルの検討を始める条件は整っていない」とした。ポーランドのトゥスク首相は、同国軍を派遣する可能性を否定した。
一方、欧州各国は、北大西洋条約機構(NATO)への拠出金を増やさなければ、欧州から米軍を撤退させるというトランプ氏の発言に動揺もしている。
トランプ氏はロシア・ウクライナ戦争の即時停戦を目指している。戦争犯罪で告発されているプーチン氏を孤立させるため、3年間努力してきた欧州には、米露のトップ交渉がプーチン氏を利することにもなりかねず、その動揺も重なっている。