トップ国際欧州4年目のウクライナ紛争 欧州委 防衛体制再構築を準備 軍事的緊急事態へ対処

4年目のウクライナ紛争 欧州委 防衛体制再構築を準備 軍事的緊急事態へ対処

ニューヨークの国連本部国連総会ホールで開催された第79回国連総会期間中、「未来のサミット」で演説するウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領=2024年9月23日(UPI)

【パリ安倍雅信】欧州の複数のメディアは10日、欧州委員会のアンドリウス・クビリウス防衛宇宙担当委員が3月19日までに提出予定の「欧州防衛白書」で、欧州連合(EU)が差し迫った軍事的緊急事態と世界規模の安全保障上の課題の両方に備えるための対策を準備していると伝えた。現在、加盟27カ国は財政赤字に苦しんでおり、防衛費増額について新たな枠組みを必要としている。

背景にはウクライナ紛争が4年目に突入し、ロシアがEUの1カ国を攻撃する最悪のシナリオを想定し、万全の体制と準備を整える必要性に迫られているからだ。さらに米トランプ新政権がウクライナ支援を大幅削減する可能性がある一方、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の負担金を2%から大幅に引き上げ圧力にもさらされている。専門家も「防衛において、これまで通りのやり方を続けることはもはや不可能」と指摘している。

ウクライナ紛争で露呈したのは、EU加盟国の軍事産業の不十分な支援継続能力だった。ウクライナのゼレンスキー大統領は「約束はしても実際の武器弾薬は届いていない」と不満を表明。実際、ドイツをはじめウクライナ支援するEUの大国でさえ、保有する武器弾薬を支援に回すと自国防衛すら危なくなるのが現状だ。

現実問題として、欧州の金融機関は欧州の防衛産業への融資を控えている。マリオ・ドラギ前欧州中央銀行(ECB)が昨年制作した競争力報告書では、EUが世界防衛で競争力を保つために今後10年間で約5000億ユーロが必要になると推定されているが、加盟国の限られた防衛予算が依然として主な資金源となっている。

クビリウス委員は、2028年から34年までの次期多年度財政枠組み(MFF)において、防衛投資に少なくとも1000億ユーロを割り当てることを提案している。21年から27年にかけて、安全保障と防衛に充てられたのはわずか150億ユーロ(MFFの1・2%)だった。

クビリウス氏は「欧州は、新型コロナウイルスのパンデミックで7000億ユーロを費やし、必要なときに資源を動員できることを証明した。ロシアの脅威は、欧州にとってパンデミックよりもはるかに大きな脅威だ」と主張。その対処に「欧州を守るために協力して効果的に活動できる能力(軍事資材の共同調達など)のある加盟27カ国で構成する欧州軍が必要」と欧州委員会の外務・安全保障政策上級代表(外相級)のカヤ・カラス氏は1月の欧州防衛機関年次会議で言及している。

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