【パリ安倍雅信】仏国民議会(下院)の大勢力にのし上がった右派・国民連合(RN)は、昨年7月の下院選で国会の第3勢力となり、昨年12月にはバルニエ内閣の不信任案でバルニエ首相を発足2カ月半で辞任に追い込んだ。影響力の強さでは評価されるが過半数を占める政党がない中、RNが政府を機能不全に陥れたことに対し国民から厳しい目が向けられている。
2027年の大統領選挙を念頭に置くルペン氏にとって、過去の過激な極右勢力のイメージから脱却するため、単に何にでも反対する万年野党から政権与党に生まれ変わるため「洗練された政策」を掲げて大幅に勢力を伸ばしてきた。しかし、重要な予算を決定する国会を機能不全に陥れた代償は小さくない。
財政赤字削減のための公共支出削減が必須のフランスで、政府予算案に反対すれば25年の国家財政政策は執行できず、確実に国家は窮地に追い込まれる。さらにロシアの核の脅威が現実のものになる可能性が高まる中、政府が大統領の足を引っ張ることは仏国民も受け入れられない。さらにルペン氏自身、欧州議会議員当時の公設秘書給与流用罪の訴訟中だ。
ルペン氏が党首に据えたバルデラ氏は若いが、強い野心を持っており、次期大統領選の候補者のポストを狙っているとの見方も日ごとに高まっている。マクロン氏は今年7月以降なら、憲法上、再度解散総選挙を行うこともできる。マクロン氏自身が創設した中道政党、ルネサンスの再起を諦めているわけではない。
そもそも昨年6月に下院解散総選挙に踏み切ったマクロン氏の判断はミスだったと考える世論が圧倒的で、大統領辞任も選択肢だ。だが、フランスでは大統領が任期途中で辞任する例は非常に少なく、ウクライナ紛争、中東戦争の危機迫る中、マクロン大統領の辞任の可能性は低い。ルペン氏は今後、これ以上フランス政治に大混乱をもたらせば、「壊し屋」とのイメージを変えられず、支持率も下がる可能性がある。難しい選択を迫られている。