トップ国際欧州「コンクラーベは中世の遺物」著名神学者が司教会議での教皇選出提唱

「コンクラーベは中世の遺物」著名神学者が司教会議での教皇選出提唱

バチカン市で日曜恒例の祈りの集会に臨むフランシスコ・ローマ教皇=7月30日(AFP時事)

ローマ教皇選出会議(コンクラーベ)の廃止を訴える「爆弾発言」が飛び出した。発言者は、ローマ教皇庁(バチカン)も認知している高名な神学者、オーストリアのパウル・ツーレーナ氏だ。同氏が同国のカトリック系週刊紙「ディ・フルヘ」(最新号)とのインタビューの中で語っている。同氏は非常に論理的に語り、フランシスコ教皇の発言を引用しながら、「コンクラーベは中世の遺物」と言い切った。

(ウィーン小川 敏)

ツーレーナ氏の「コンクラーベ廃止論」に関連する発言を紹介する。「現在カトリック教会で規定されているコンクラーベはもはや時代遅れだと考える。教会のより大きなシノドス性(協議性)は、教皇選挙の改革を意味する」「なぜ教皇選挙が、教皇自身が自由に任命する枢機卿たちの手に委ねられるべきなのか。私は、コンクラーベは中世の遺物だと考えている」という。これらの発言にはバチカンの土台を揺るがすのに十分なパワーがある。

フランシスコ教皇は12月17日、88歳になったばかりだ。年齢では在職中の教皇としては93歳で亡くなったレオ13世に次いで歴代2番目の高齢教皇だ。同時に、変形性膝関節症に悩まされている。教皇は2021年7月4日、結腸の憩室狭窄(きょうさく)の手術を受けた。フランシスコ教皇は体力的には満身創痍(そうい)だ。次期教皇選出会議がいつ開催されたとしても不思議ではないのだ。

南米出身初のローマ教皇は選出されてはや11年が過ぎた。この期間、フランシスコ教皇が任命した枢機卿は現在、80歳未満のコンクラーベ参加有資格者の3分の2以上を占めている。13年3月以来、これまで10回、枢機卿任命式を実施してきた。12月7日に新たに21人の枢機卿を任命したばかりだ。

フランシスコ教皇選出の枢機卿数は132人だ。そのうち99人が現在、80歳未満でありコンクラーベの投票権を持っている。だから、フランシスコ教皇が亡くなったとしても、次期教皇はフランシスコ教皇によって任命された枢機卿たちの手にあるわけだ。

ツーレーナ氏は「各大陸の司教会議が新しい教皇を選ぶためにローマへ代表を派遣すべきだ。それがシノドス的な方法だ。枢機卿を任命した教皇や枢機卿には敬意を払うが、それはもはやシノドス的な教会には適合しない古い仕組みだ」と強調する。

具体的には、コンクラーベで枢機卿が次期教皇を選出するのではなく、各国の司教会議の代表たちが話し合って決めるべきだという。

ツーレーナ氏によれば、フランシスコ教皇自身が「教皇職も将来的にはシノドス的に行使されるべきだ」と述べている。それは第1バチカン公会議(1869~70)で描かれた絶対主義的で君主制的な教皇像との決別を意味する。教皇の中央集権制から非中央集権化だ。ローマ教皇と枢機卿たちだけがバチカンに集まり、世界約14億人の信者たちの牧会の諸問題を協議する代わりに、教会で牧会を担当する現場の司教たちが集まって、次期教皇の選出問題を含め、教会が直面している諸問題の解決策を模索していくというわけだ。

一見、民主的な選出方法だが、問題が出てくる。グローバリゼーションの時代、ソーシャルネットワークが発展している現代社会、聖職者もそれらの影響を受ける。世論調査が行われ、フェイクニュースがあふれている情報社会で生きている聖職者もやはり人間だ。意見は多様化し、牧会一つ取ってもさまざまなやり方が考えられる。国、地域でその文化、慣習は異なる。そのような環境圏で果たして各国の司教会議が統一された教会像を構築できるだろうか。ボトムアップで統一した教会体制がキープできるかだ。

問題の核心は、神を信じ、人類の救済を訴える教会に神の聖霊の働きがあるか否かだ。ツーレーナ氏の「コンクラーベ廃止論」には、「ペテロの後継者(ローマ教皇)」が主導するカトリック教会体制の終焉(しゅうえん)をもたらす深刻な問い掛けが含まれている。

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