【パリ安倍雅信】フランス国民議会(下院、定数577)は4日、バルニエ内閣に対する不信任決議案に過半数が賛成票を投じ可決した。フランスでの不信任は1962年のポンピドゥー内閣以来。マクロン大統領が今年9月にバルニエ首相を指名したが、2カ月半で内閣総辞職する。今年6月末に解散総選挙が実施されており、憲法の規定で来年7月までマクロン氏は総選挙を実施できない仕組みになっている。
7月に結果が出た下院選挙で過半数を獲得した政党はなく、左派連合の新人民戦線(NFP)、中道の与党連合、右派・国民連合(RN)の順だった。NFPは自派が立てた首相候補をマクロン氏に排除され、強い不満を持つ一方、RNも下院選挙でNFPと与党連合の妨害を受けて議席を伸ばせず、政権に批判的だった。
ただ、RNを実質的に率いるマリーヌ・ルペン前党首が政権政党を目指す立場もあり、バルニエ内閣に暗黙の協力姿勢を見せていた。だが、ルペン氏は結果的に、バルニエ内閣の600億ユーロの財政赤字削減を含む予算を容認できないとして、NFPと共に不信任賛成に回った。
RNがNFPに同調した結果、不信任決議案は可決に必要な289票を優に上回る331票の賛成票が投じられた。
マクロン氏は辞任しないことを表明。トランプ次期米大統領が今週末、ノートルダム大聖堂再開式典への出席でパリを訪問することもあり、内閣不在という不名誉を避けるため、マクロン氏は速やかに新首相を指名するとの見方もある。
ただ、マクロン氏が辞任しない限り、総選挙は来年7月まで行えず、過半数を占める政党のない現在の議会の状態は続く。ウクライナ戦争で欧州全体が危機に直面する中、連立政権崩壊のドイツと並びフランスも政治的混乱の中で新年を迎えることになる。