トップ国際欧州聖職者の性犯罪に「時効」 判決受け被害者ら抗議 独カトリック教会

聖職者の性犯罪に「時効」 判決受け被害者ら抗議 独カトリック教会

バチカン市のサンピエトロ広場で、一般謁見(えっけん)に臨むフランシスコ・ローマ教皇(左)=3月14日(EPA時事)
ドイツのローマ・カトリック教会アーヘン司教区で11月18日、同司教区が聖職者の性犯罪に関連した慰謝料請求訴訟2件の「時効」を主張し、認められたことに抗議して約400人がデモを行った。抗議イベントには、カトリック信徒の代表機関である教区評議会や複数のカトリック団体が支援を表明した。アーヘン司教区からはヘルムート・ディーザー司教も参加し、教会側の立場を説明した。(ウィーン小川 敏)

抗議デモを報じたバチカンニュース(独語版)によると、被害者評議会のマンフレッド・シュミッツ氏は、「司教区は長年にわたり公務上の責任を否定してきた。今になって、慰謝料請求に時効が成立すると言うのはおかしい」と批判し、被害者との裁判外での交渉を求めた。教区評議会のアニータ・ツケットデブール氏は、司教区の意思決定者に対し、被害者の声にもっと耳を傾けるよう要求した。また、ドイツ・カトリック女性連盟(kfd)の代表者は「司教区の指導部は被害者よりも金銭の問題を優先しているようにみえる」と述べた。

一方、ドイツ司教会議の虐待問題担当者でもあるディーザー司教は、週末に司教区が裁判で取った行動を擁護し、「司教区としては、慰謝料請求訴訟について個別に検討する必要がある。今回の2件については、財務委員会と司教座聖堂参事会の二つの組織の決定を考慮しなければならなかった。すなわち、10万ユーロ(約1600万円)以上の慰謝料を含む法的取引において、司教としてこれらの助言に従う義務があるからだ」と説明している。聖職者の性犯罪への賠償請求で財政危機に陥る教会が出てきている。訴訟社会の米国では破産する教会が後を絶たない。

一方、アーヘン司教区の性的暴力独立調査委員会(UAK)議長で社会学者のトーマス・クロン教授は、司教区の委員会を批判、「被害者たちは、長い間虐待について語ることができなかったため、十分な時間があったとは言えない」と指摘した。また、ボンの教会法学者ノルベルト・リューデケ氏も司教区を批判し、「隠蔽(いんぺい)によって長期間にわたって真相解明を遅らせた組織が、今度は『終止符』を打とうとする戦術で責任から逃れようとしている」と述べている。

聖職者の未成年者への性的虐待事件では、カトリック教会側は長年沈黙し、事件の当事者の聖職者を人事という形で移動するなど隠蔽工作をしてきた。欧州最大のカトリック教国、フランスで1950年から2020年の70年間、少なくとも3000人の聖職者、神父、修道院関係者が約21万6000人の未成年者への性的虐待を行っていたことが明らかになった。教会関連内の施設で、学校教師、寄宿舎関係者や一般信者による性犯罪件数を加えると、被害者総数は約33万人に上るという。その際、教会側の「告解の守秘義務」が事件の解明にとって大きな障害となってきたことが明らかになり、告解の守秘義務の見直しを要求する声が聞かれ始めている。

アーヘン司教区の場合、守秘義務の問題だけでなく、「時効」という新たな法的な障害が表面化してきたわけだ。

ドイツでの性犯罪の時効期間は、犯罪の種類や重さ、被害者の年齢に応じて異なる。未成年者に対する性犯罪の場合、時効の開始は、被害者が30歳に達するまで延期される。ドイツでは15年に法改正が行われ、未成年者への性犯罪の時効期間が延長された。性犯罪の時効は多くの議論を呼んでおり、被害者が事件について話すまでに時間がかかる場合が多いことから、時効撤廃やさらなる延長を求める声も上がっている。

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