【パリ安倍雅信】欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会を率いるフォンデアラエン委員長は1日、2期目を迎えた。1期目はコロナ禍への対応に始まり、EU領域に最も近いウクライナでの紛争、エネルギー危機、中東での紛争などへの対応に追われた。さらに気候変動対策の実行、人工知能(AI)の活用など医療分野を含め、先端技術にも取り組んできた。
フォンデアライエン氏は、人口5億人規模のEUトップとして、新型コロナウイルスの感染拡大とロシアのウクライナ侵攻、英国のEU離脱の中で、難しいかじ取りを迫られたが、中央集権的な意思決定で乗り越え、リーダーシップを示した。
2期目の新体制では、米国で来年1月に始動するトランプ政権への対応で手腕が試される。特にウクライナ支援では、米国が縮小させたとしても、欧州が主導権を握り、支援を継続する意思を示している。
ロシア危機に直面するエストニアのカラス前首相が、外交安全保障上級代表(外相)に就任したことで、2期目の外交の要となる人物が、対ロシア強硬派になった意味は大きい。トランプ氏は停戦に意欲を見せているが、EUはウクライナに大きな譲歩を迫る停戦案に強い警戒感もある。
経済では、フォンデアライエン氏がイタリアのドラギ前首相(欧州中央銀行前総裁)に要請したEUの経済政策の報告書を基に、競争力の強化、デジタル化、人材育成を急ぐ。環境対策でカーボンニュートラルに向けた政策、途上国の環境対策への経済支援も必須の課題だ。
欧州委員会は、右傾化する欧州議会とも向き合うことになり、移民対策でEU市民が共感する政策を打ち出すことも求められている。新たにEU大統領に就任するポルトガルのコスタ前首相との連携も重要だ。