【パリ安倍雅信】フランスの農民が先週末、大規模な抗議デモを開始し、仏農業組合代表は「85地点で抗議行動が進んでいる」と述べた。一方、ブリュノ・ルタイヨー仏内相は、一般車両や大型トラックの公道での交通を継続的に妨げる行為は「一切容認できない」と述べ、道路封鎖を排除する構えを見せている。農民らは、南米からEU基準を満たさない安価な肥料や農産物が流れ込むことに強い不満を表明している。
欧州連合(EU)とアルゼンチンなど南米南部共同市場(メルコスル)が自由貿易協定を結ぶ動きを見せている中、南米訪問中のマクロン仏大統領が「現状のままでは署名しない」と現地からメッセージを出したことに「口先だけ」と仏農民は強く反発した。EU内でもフランスの農家は厳しい農薬使用規制、遺伝子組み換え作物の栽培を禁止し、厳しい安全性審査を行っており、安価な制限に準拠しない食品や飼料が流入すれば、多くの農家が廃業に追い込まれると主張している。
今年1月には、EUの環境規制をめぐり、規制の緩いウクライナ産小麦粉などが大量にフランスに流れ込んだため、農家による抗議デモが拡大し、高速道路がトラクターで封鎖される事態が相次いだ。その抗議行動から1年もたたずに同様な抗議行動が再発した。ただ、今回は、7月の下院選挙の結果、単独過半数を取る政党がなく、バルニエ政権が予算編成で決められない状態に陥っている中で起きた。