【パリ安倍雅信】スペインからの報道によると、10月末から続く集中豪雨の被災地、同国の東部バレンシアを見舞うために訪問した国王フェリペ6世とレティシア王妃は3日、国の対応が遅かったことに怒る群衆から泥を投げ付けられる事態が起きた。今回の豪雨による洪水で200人以上の死者が確認され、特に国王夫妻が訪問した被害が甚大なパイポルタの町で片付けに追われる住人の一部が暴徒化した。
豪雨に襲われた当時、当局の警報が発せられるまで時間を要し、避難が遅れたことで犠牲者も増えたとして、住民たちが政府の対応を非難していた。国王夫妻にはサンチェス首相や州知事も同行していた。国王夫妻は顔や衣服に泥が付いた状態で訪問を続け、被害者の住民を抱きしめて慰めたと現地メディアは報じた。首相の車への投石もあったという。
サンチェス首相は2日、災害救助支援のためバレンシア州に兵士や警官や治安警備隊を平時としては最大規模の1万人増派すると指示した。その上で首相は、対応が「不十分」で人手や物資不足で「深刻な問題」があることを認めた。スペイン東部では激しい集中豪雨により10月29日から浸水被害が始まり、複数の橋が崩落し、大量の泥で町が覆われた。水や食料、電気の供給が途絶えている。
3日時点で確認されている死者217人のほぼ全員がバレンシア州に集中しており、行方不明者が多いことから死者数は今後増える可能性が高く、被災地では、緊急対応チームが行方不明者数十人の捜索を続けている。最悪の豪雨はバレンシア州と地中海沿岸を通過したが、南部では依然として警報が出されており、4日時点で、オレンジレベル(4段階中3)で、被害の大きい同州カルタヤ市ではわずか10時間で2カ月分の雨が降った。